地域音楽コーディネーター フルーティスト 認知機能改善プログラム講師 東京都 菱井里絵さん

- ■活動テーマ:
- 音楽の時間を生活の中に、そんなひと時をお届けしたい
- ■目次:
- ■活動開始時期:
- 2017年~現在
- ■場所:
- 首都圏のホール・小学校・病院・福祉高齢者施設
- ■対象:
- 子どもから高齢者
- ■活動内容
1.きっかけ
私は現在フルーティスト、認知機能改善プログラム(*1)講師として活動しています。日本は2022年、超高齢化社会(65歳以上が国の総人口の29%)に入りました。その状況の中、高齢者に対するデイサービス施設も増えています。高齢者施設での活動は、学生時代、友人にイベントに誘われ出演をしたのがきっかけです。演奏中、聴いている方々の表情がとても印象的だったことを今でも覚えており、その後ボランティアでの演奏を中心にいろいろな施設へ伺いました。同じ施設へ定期的に訪問をするようになると、私自身のことを覚えてもらい来訪を待ち望んでいただけるようになりました。この経験により音楽の力の効果に興味と実感を持ち、演奏者として活動する中で更に身近な場所で気軽に聴いてもらえる機会を作ることの意義を感じました。
*1)認知機能改善プログラム:アクティビティプログラム:昔のことを思い出す「回想法」。好きな歌を聴いたり歌ったりする「音楽療法」を継続的に取り組むことで、楽しみながら脳や心身の機能を活性化することを目的としたもの。
2.具体的な内容
A.福祉高齢施設への訪問
デイサービスへ定期的に訪問し、施設に音楽の時間を設けてもらいます。フルートに伴奏音源を使用して演奏します。認知機能改善プログラム講師としての知識「回想法」(昔の思い出と経験を語り合う心理療法)を取り入れた音楽会を行っています。
ポイントは
- 利用されている方々の年代に合わせ選曲する
- 懐かしいなじみのある曲を演奏する
- 曲と曲の合間にそれぞれ過ごしてきた時代のお話をし、思い出話に花を咲かせることにより自己確認をさせる
- 演奏に合わせて一緒に歌ってもらう
認知症の方は直前の出来事は忘れてしまっても、子供の頃のことなどの昔のことは記憶に残っている方が多いのです。昔の思い出を引き出すきっかけとして演奏する曲(歌謡曲、ポップス、映画音楽等)が糸口となっています。そうすることによって懐かしい楽しいとポジティブな感情が湧き、脳が活性化して心地よい精神状態となっていくというのが「回想法」 の効果です。音楽と記憶の結びつきに関して、今後も研究していきたいと考えています。
その他にも、はっきりと認識してもらえるようにプログラムを作って楽しい時間を過ごしていただきます。
- 季節やその月にちなんだ色合いの衣装を選択し、見た目も楽しんでもらう
- 季節、行事に関連した曲や音楽の教科書で習った童謡、歌謡曲、クラシックなどいろいろなジャンルを交えて演奏を聴いてもらう
- 歌ったり、身振り手振りで体を動かしたり能動的な活動も行う
訪問を始めた頃は毎回初めまして状態でしたが、回を重ねるごとに認識してもらえるようになり、今では訪問をとても楽しみに待っていただけているようで皆様方がとても笑顔いっぱいに歓迎してくれます。そして毎回、「今度はいつくるの?」と名残惜しそうにしてくださいます。


B.コンサート
(1)フルートで奏でる秋のコンサート
「もっと身近にもっと気軽に」をコンセプトに日本のうたを中心に子どもから高齢者まで幅広い年代の誰もが聴いたことがある、歌った事があるような馴染みのある曲をプログラミングした小さなコンサートを江東区森下にあるスタジオChez Claude(シェ・クロード)で開催しました。
PLAY&TALKという形で演奏と曲に関する小話や逸話をとり交ぜ行いました。時には限られた人しか知らない話などを演奏の合間に披露すると、驚いたり笑ったりとアットホームな感じで進行していきました。演奏を聴いて涙を流したりする場面もあり、皆それぞれ思い思いに表情豊かにリラックスをしながら演奏を楽しんでくださいました。
小一時間の小さな演奏会でしたがアンコールもリクエストされ、その後、フルートに興味のある方には実際に楽器に触れてみる時間も用意しました。「楽器を持ってみて意外に重かった」「構えるのが大変」という感想や、楽器を構えて写真を撮ったりしながら有意義な時間を提供できました。次回は夏頃に夏のうたを中心に演奏会を開催予定です。

(2)デュオコンサート
フルートとピアノとの演奏会や、フルート2本での演奏会を病院や高齢者施設、福祉施設や学校などで季節のイベントとして演奏しています。学校では校歌などを演奏します。またどの年代にも対応できるよう様々なジャンルの曲を用意して演奏会を行います。病院では映画音楽、ドラマ、CMなどで流れてくるようなクラシックなどを演奏すると、とても喜んでいただけます。

3.成果と課題
(1)演奏者と聴衆の求めているもの
学生時代はクラシックを中心にフルートの曲やオーケストラでの演奏が多かったのですが、現在の活動をきっかけに自分が演奏したい曲と聴衆が聴きたい曲には大きな違いがあることがわかりました。自分の力量を披露するような曲の演奏は自己満足でしかなく、聴いてくださる人には全く響かないことが多々あるということです。しかし簡単なメロディーだから、皆が知っている曲だからといっても、相手に届くように心を込めて演奏しなければ受け入れてくれません。また自分が好きだから相手も好きだとは限りません。それが子供でも高齢者でも同じです。
(2)臨機応変な対応とリサーチ
プログラム内容はその日そのときの対象者の状態で演奏内容を臨機応変に対応していくことが重要です。そのためにも多くのレパートリーを持つ必要があります。対応する方々や施設などのニーズに応えるためにはリクエスト、アンケートやフォーカスグループインタビューを実施するなど、実施前後にリサーチしておくことはかかせません。実際、私の知らない曲がある場合もあり勉強にもなりました。
(3)謝礼
謝礼については成果に対して少ないことが長年の課題です。活動の維持・継続をするためには会場、担当者へどのように説明していくかが今後の最大の課題になります。
4.抱負
日本全国各所で、誰でも気軽に身近に生演奏が聴ける演奏会が聴ける環境作りを目的に、地元の自治体・プロ、アマ音楽団体・いろいろな楽器の演奏家とともにネットワークを構築し組織化できるように進めていきたいと考えます。
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