地域音楽コーディネーター 羽曳野市眠ウインドオーケストラ指揮者 大阪府 羽田彩乃さん
- ■活動テーマ:
- 「今できる最高の音楽」を仲間と共に創り、楽しむ~地域密着、文化振興を目指す市民吹奏楽団~
- ■目次:
- ■活動開始時期:
- 2009年入団~現在
- ■場所:
- 羽曳野(はびきの)市立生活文化情報センター
LICはびきのサムテックホールM 他 - ■対象:
- 高校生~シニアの方々まで
1.きっかけ
私は幼少期からピアノに親しみ、中学校で念願の吹奏楽部へ入部しました。大人数の部活の中でバスクラリネットを担当し、吹奏楽の魅力に深く魅了されたのが原点です。高校からはクラリネットに転向し、小編成の中でも音楽を楽しみました。
大学進学を機に「学業と両立しながら、楽しく真面目に音楽と向き合いたい」という思いを抱いていたところ、高校時代の先輩の紹介で「羽曳野市民ウインドオーケストラ(以下、羽曳野ウインド)」に出会いました。一時期は大学の吹奏楽部で活動し、卒業を機に再び羽曳野ウインドへ復帰。その直後、楽団幹部から「指揮者をしてみないか」と打診を受けました。
文学部出身の私は、指揮は未経験で戸惑いもありましたが、「まずは挑戦してみよう」と一歩を踏み出し、指揮棒の持ち方やスコア(*)の読み方を一から学びました。団員の温かいサポートやお客さまの応援に支えられながら、気づけば指揮者として10年以上の月日が流れました。
*)スコア:オーケストラや吹奏楽の楽曲で扱うすべての楽器や合唱のパートを一目で見わたせる楽譜。総譜ともいう。
2.具体的な内容
(1)結成のきっかけと目標
1998年に羽曳野ウインドが結成したきっかけは、羽曳野市内の6つの中学校の卒業生たちでした。当時、中学校を卒業後、進学先の高校に吹奏楽部がないといった理由で、大好きな吹奏楽を続けたくても続けられない環境にある人たちが多くいました。その生徒たちの大切な「音楽の受け皿」になりたいという目的から生まれたのがこの楽団です。私たちは結成以来、「青少年の健全育成」と「地域の文化振興」という大きな目標を掲げ、日々活動を続けています。
(2)体制
現在、羽曳野ウインドは高校生から60代まで、約60名の幅広い世代の経験者が集まって活動しています。現役の会社員や主婦、定年退職されたシニアの方までメンバーのライフスタイルは様々で、それぞれが日々の生活を大切にしながら音楽を楽しんでいます。
ふだんの活動メンバーは約60名ですが、退団ではなく「休団中」のメンバーを含めると約80名もの仲間が所属しています。ブランクが長くなってもふと戻ってきたくなるアットホームさや、自分のタイミングで復帰できる安心感があるからこそ、この体制が保たれています。また、演奏者としての復帰が難しくても、定期演奏会のステージマネージャーとして裏から楽団を支えてくれるメンバーもいます。
練習は毎週土曜日(19:20〜21:20)に行われる全体合奏です。年に2回開催する定期演奏会に向け、3名体制の合奏指導のもと、それぞれの個性を生かした多角的なアプローチで深みのある音楽づくりを目指しています。
(3)団員の自主性を持った演奏会実行委員会の結成
当楽団の大きな特徴であり誇りでもあるのが、定期演奏会における「団員の自主性」です。定期演奏会ごとに、立候補などで集まった4名ほどの団員による「演奏会実行委員会」を結成します。回ごとにメンバーが新しく替わるため、集まる世代やカラーもガラリと変化します。
- ①まず実行委員会が演奏会の核となる「テーマ」を立案
- ②そのテーマに沿った楽曲アイデアを全団員から募集
- ③集まった数多くの候補曲の中から、実行委員会が全体のバランスや演出を考慮して最終的な選曲と構成を決定
実行委員が代われば、生まれる発想や演出も全く異なるものになります。それゆえに、羽曳野ウインドの定期演奏会は毎回全く違う表情を見せるのが一番の見どころです。テーマ決めから選曲まで、団員みんなの「これがやりたい!」「こんな音楽を届けたい!」という思いがバトンとなってつながっていくからこそ、本番のステージでは全員が一丸となった熱い演奏をお届けできています。下記のフライヤーは実行委員が提案した演奏会のイメージをデザインが得意な団員が手作りしてくれました。このときの演奏会は大阪万博の年だったので、『世界各国の雰囲気を感じられるような演奏会』でした。
(4)活動内容
A.主催公演 定期演奏会、アンサンブルコンサート他
現在は「LICはびきの」を拠点に、年間を通じて多彩な演奏活動をしています。特に力を入れているのが、楽団が主催する年2回の定期演奏会とアンサンブルコンサートです。アンサンブルコンサートは10チーム以上が出演しています。
B.地域への支援コンサート
市民文化祭やファミリーフェスタ、チャリティークリスマスコンサートなど、年間10回以上に及ぶ依頼演奏会にも積極的に出演しています。
〇市民文化祭ではトリを務め、会場のお客様と一緒に大合唱をして締めくくりました。
〇ファミリーフェスタでは地元羽曳野市のチアチームとコラボレーションさせていただきました。
〇チャリティーコンサートではお客様から頂いた参加費は主催団体を通じて能登災害へ募金しています。
〇商業施設
藤井寺イオン「古墳にこーふんツアー」で開演のファンファーレも演奏させていただきました。羽曳野市はヤマトタケルが舞い降りた地と伝えられ、49基の古墳が有り、2019年大阪初の世界遺産に登録されました。
〇落語と吹奏楽のコラボレーション
2024年5月には、羽曳野市出身であり上方落語協会会長の笑福亭仁智師匠をお迎えし、「落語コンサート」(主催:吉本興業 共催:株式会社みのりの里)を開催しました。落語と吹奏楽という非常に珍しいコラボレーションでしたが、生演奏の臨場感と落語の笑いが融合し、会場は大いに盛り上がりました。こうした地域を巻き込んだエンターテインメントに挑戦できるのも、羽曳野ウインドならではの魅力です。演奏を通じて地域の方々と直接ふれあい、羽曳野の街に音楽の輪を広げる文化振興の一助となれるよう、団員一同まごころを込めて音を奏でています。
3.成果
高校生からシニアまで、幅広い年代のメンバーが大好きな吹奏楽を通じて集まり、地域の皆様と深いつながりを持てること。この環境は、演奏する私たちにとっても、聴いてくださるお客さまにとっても、お互いを笑顔にする大きな力となっています。団員にとっては日頃の成果を舞台で発表することが生きがいであり、足を運んでくださるお客さまの大半を占める吹奏楽未経験の方々に「音楽って楽しい!」と感じていただける瞬間は、私たちが感じる最高の喜びです。
更にほほえましい成果として、かつて連れてきていた子どもたちが大きくなり、自らも吹奏楽を始めて「親子共演」を果たす家庭が増えてきました。裏方スタッフとして定期演奏会をお手伝いしてくれる子どもたちもおり、親である団員からは「音楽を通じて子どもに貴重な社会経験を積ませてもらえる」と感謝の声が上がっています。
世間ではエキストラ(客演)に頼る楽団も多い中、羽曳野ウインドは今でもほとんどエキストラを呼ばず、こうした団員や家族のきずなで演奏会を形作っています。「青少年の健全育成」を目標に掲げる私たちが活動する場所だからこそ、まずはその場自体が温かく健全であること。変化を恐れず互いを補い合いながら、これからも羽曳野ウインドらしい温かい音色を守り続けていきます。
4.課題
一方で、アマチュアの市民楽団として活動を継続する上での課題もあります。卒業や就職、結婚や出産など、ライフサイクルの変化に伴うメンバーの入替えは避けられず、演奏会ごとに楽器の編成バランスが崩れてしまう悩みは常に付きまといます。しかし、羽曳野ウインドにはそうした変化を包み込む温かい土壌があります。周囲の理解があるため子ども連れでの練習参加もしやすく、家庭の事情などで一時的に演奏から離れても「いつでも復帰できる場所」として温かく迎え入れています。
5.抱負
1998年の結成からこれまで、私たちは「吹奏楽を続けたくても続けられない人たちの受け皿になる」という大切な役割を、一歩ずつ果たしてくることができたと感じています。それゆえに未来に向けて、地域の中学生や高校生の現役吹奏楽部員たちに対して、交流などを通じて積極的に関わっていくことが私たちの新しい夢です。彼らが私たちの演奏を聴いたり、一緒に音楽に触れたりしたときに、「大人になっても、これからもずっと吹奏楽を続けたい!」と未来にワクワクしてもらえるような憧れの存在になれればと考えています。これからも指揮者とクラリネット奏者の両立を目指し、異世代の仲間たちと「楽しく、真摯に」音楽に挑戦し続けながら、地域の未来へ音楽のバトンをつないでまいります。
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