地域音楽 コーディネーター

活動事例 地域音楽 コーディネーター

【事例紹介】手が届く距離で気軽に楽しむ、目の前で響く三味線の音色を未来へつなぐ

(2026年10月06日公開)

地域音楽コーディネーター 三味線奏者 大阪府 松浪千瑠々さん

筆者
筆者
■活動テーマ:
手が届く距離で気軽に楽しむ、目の前で響く三味線の音色を未来へつなぐ
■目次:
■活動開始時期:
2023年~現在
■場所:
大阪府下
■対象:
一般

1.きっかけ

(1)三味線との出会い

学生時代はピアノやクラリネットを演奏しており、邦楽とは縁のない生活を過ごしておりましたが、歌舞伎や落語などの伝統芸能も好きだった影響で、落語家が舞台にあがる際に流れる音楽、いわばテーマ曲である出囃子の三味線、特に上方落語の噺の間に鳴り物が入る「はめもの」(*1)の三味線の音色に惹かれました。

*1)「はめもの」:情景描写を三味線、太鼓、笛などで演出する効果音楽

ある日「三味線を弾いてみないか」とある方に声をかけていただいたのですが、楽器を習うなら若いうち、それも邦楽器は家族に演奏される方がいるものと思いこんでいました。そのとき私は40代で、その年齢から始めてできるのかと躊躇(ちゅうちょ)しているところ、運を天にまかせる気持ちで、知り合いに紹介していただいた占い師を尋ねたら「貴方には三味線を次代へ伝えていく使命がある、とにかくすぐに習い始めなさい」と言われ、三味線を習ってみようと決心しました。

(2)活動のきっかけ

まず基礎を習い始め更に三味線の音色のとりこになり、もっと上手にいろいろな曲を弾けるようになりたい一心で、演奏活動をするということは考えていませんでした。お稽古を続けていくうち、落語の出囃子(でばやし)を弾かれている方とご縁があり、出囃子(でばやし)を教えていただきました。その後、その方のご紹介で上方唄松浪流(*2)松浪千壽家元に師事し三味線を弾いて唄う楽しさを学び、そこから多くの方々へ「この楽しさを知ってもらいたい」「広めていきたい」と思うようになり、演奏活動を始めました。

*2)上方唄松浪流:2011年に松浪千壽が創流し、上方唄、地歌、筝曲、胡弓などを普及啓蒙(けいもう)している流派

2.具体的な内容

(1)目的

私自身がそうであったように、日本人でありながら日常生活の中で邦楽を聴く、また触れる機会はなかなかありません。少しでも邦楽に触れる機会を作りたいと、松浪流の仲間で定期的に演奏会を開いています。できるだけお客様と距離が近く、弾いている手元が見えるような会場で演奏しています。上方唄は元々お座敷で唄われてきたものですので、身近なところで楽しんでいただくのが目的です。

(2)内容

A.道頓堀ミュージアム並木座

近鉄日本橋駅から徒歩3分のところにある道頓堀ミュージアム並木座にて偶数月の第3火曜日に、月変わりで松浪流のメンバーが演奏会を開いています。江戸時代の芝居小屋のような会場で聴く三味線 や筝の音色は、タイムスリップしたような感覚で楽しんでいただいています。

B.コサカノイエ 泉庵

コサカノイエ 泉庵は東大阪市河内小阪にある古民家で、そこでのお食事会のBGMとして、三味線の生演奏のご依頼がありました。灯(あか)りをともした庭が幻想的で、そのお庭を背景に演奏させていただきました。

C.夕涼み会

大阪の北浜にある企業がお持ちの施設で納涼会を開催され、お料理やお酒を頂きながら、大阪市北区中之島の南縁を流れる土佐堀川の夜景をバックに三味線と唄を楽しんでいただきました。

3.成果

演奏会では多くのお客様より下記のうれしいコメントを頂きます。

  • ・三味線の生の音を初めて聴きました
  • ・三味線を間近で見るのは初めてです
  • ・三味線ってこんなに心に響く音なんですね
  • ・三味線の音が懐かしいなと感じるのは、きっと日本人のDNAなんでしょうね
  • ・こんなに表情豊かな音色だと思いませんでした
  • ・もっと難しい曲なのかと思っていたけど、楽しいものなんですね

皆様初めて出会う三味線の音色に驚き、楽しいと感じていただけることが、演奏者として何よりの喜びです。

4.課題

現代の私たちにとって身近な楽器といえば、ピアノ、ギター、サックス等、音楽ジャンルでいうと洋楽器で奏でるポップスとクラシックがほとんどです。このような楽器や音楽は小さい頃から親しみ慣れているのですが、残念ながら三味線や邦楽に触れる機会がほとんどありません。結果「難しそう」「格式が高そう」「知識がないと楽しめない」という見えない壁ができてしまっているように感じます。この壁をなくすことが邦楽に携わっている私たちの一番の課題です。「なんだか面白そう」「ちょっと聴いてみようか」「知っている曲がある」「こんな曲も三味線で演奏できるんだ」という気軽さを伝えられたらと思っています。

5.抱負

三味線で演奏する端唄、小唄、地唄は、お座敷という人との距離が近い空間で育ちました。演奏者の息遣いが伝わる距離で、お客様と会話を交えながら楽しむことで、本来の三味線の魅力が伝わると思います。三味線は知識があって初めて楽しめるものでも、特別な人だけのものでもありません。目の前で響く音に耳を傾け、心が動く、それはどのジャンルの音楽も同じです。私は三味線の音との出会い、その最初の一歩を気軽に踏み出せる場所を作り、一人でも多くの方に三味線の魅力を届け、未来へ繋(つな)げていきたいと思います。

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