音楽文化の創造(CMC)
電子版 Vol.31
2025年1月10日発行
Vol.31 特集「SDGsと音楽~楽器の素材をめぐって~」
2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発計画」いわゆるSDGs(Sustainable Development Goals)は、
貧困、暴力、気候変動、感染症など、様々な課題に対して、今後も安定して暮らし続けることができるよう
2030年までに全世界で協力し、達成するべき課題を17の目標を提示している。
その中でも12「つくる責任つかう責任」13「気候変動に具体的な対策を」14「海の豊かさを守ろう」15「陸の豊かさもまもろう」の
4つは、直接的に環境の持続可能性を目標としている。
環境問題への取り組みというと、緑化や生物保護などが思い浮かびやすいが、音楽ではどのような取り組みがなされているのであろうか。
高価な楽器ほど、象牙・鼈甲・皮革など、希少生物に由来する素材を用い、ごく限られた種類の木材を必要としてきた。
そしてその素材に由来する音色や響きには、他に代え難いものがあるといわれる。
今回の特集では楽器の素材に着目し、環境や資源保護を視野に入れた取り組み、リユース・リデュース・リサイクルなど
持続可能性のある楽器づくりの取り組み、楽器の素材に関する新しい考え方などを通して、
音楽におけるSDGsの現状と課題について論じていきたい。
邦楽器の持続可能性に必要な視点とは
邦楽器は歌舞伎や文楽、日本舞踊など多くの無形文化財に欠かすことのできない道具であるが、生産数は昭和の半ばから減少を続けている。例えば1970年に年間18,000丁あった三味線の生産数は2017年には3,400丁に、箏も同様に25,800面から3,900面ま…
京都女子大学 教授 前﨑 信也
「邦楽器の持続可能性に必要な視点とは」 より
ペルナンブコ材の現状と今後の課題
私は2022年11月に中米パナマで開催された第19回ワシントン条約締約国会議(Cop19)に全国楽器協会(以下、全楽協)のCITES委員として参加した。ブラジル政府から、ペルナンブコ材を象牙並規制の附属書Iに格上げする提案がなされたためで…
一社)全国楽器協会CITES委員
株)文京楽器・株)アルシェ代表取締役社長 堀 酉基「ペルナンブコ材の現状と今後の課題」 より
海洋ゴミを媒介とした音楽の歴史の追体験
皆さんは『海洋ゴミ楽器』という慣れない造語を聞くと、何を連想するでしょうか。おそらく『ゴミ』と聞くと、大半の方が至極当然のことながらネガティブな想像をするでしょう。また、ゴミから作った楽器なんて良い音がする訳が無いと考える方が圧倒的多…
パーカッショニスト・楽器製作家
海洋ゴミ楽器集団 ゴミンゾク 代表 大表 史明「海洋ゴミを媒介とした音楽の歴史の追体験」 より