音楽文化の創造(CMC)
電子版 Vol.14
2020年10月1日発行
Vol.14 特集「プロとアマチュアの境界線」
「私は時間もお金もかけてコレに打ち込み、時には人に教えたり、楽しませたりもしている。でもプロを目指しているわけではない。」
「自分は確実にアマチュアである。でも『生涯学習』や『趣味活動』と呼ばれるのはちょっと違う。」
生涯音楽学習を始めとして、芸術文化活動にはこのような「プロ/アマ」の境界という古くて新しい問題がつきものである。
動画配信などを通じて「有名人」や「人気者」になれるかもしれない時代、その境界は一層ファジーになっているようにも見える。
本号では、気鋭の研究者の力を借りて、この問題について考えてみたい。
専門的に面白さを深めるアマチュアの人生と生涯音楽学習
文化人類学者のルース・フィネガンは1980 年代前半にイギリスの新興都市ミルトン・キーンズでフィールドワークを行い、この町のアマチュア音楽活動を網羅的に調べた(Finnegan 2007 [1989])。アマチュアはプロに比べれば「隠れた」存在であるが…
東京大学大学院情報学環 特任研究員 杉山 昂平
「専門的に面白さを深めるアマチュアの人生と生涯音楽学習」 より
「躍動するアマチュアたち-20 世紀転換期のイギリス音楽界」
19 世紀末から20 世紀初頭にかけて、イギリスの音楽界ではアマチュア論議が盛り上がった。長年に わたって家族や友人間で音楽を楽しんできたアマチュアの活動は、産業経済の著しい発展と共に、内輪 の域を超え、演奏者や教師として公に目立つ―プロ…
お茶の水女子大学基幹研究院研究員 西阪 多恵子
「躍動するアマチュアたち-20 世紀転換期のイギリス音楽界」 より
「プロ」らしさの装い―夢追いバンドマンにとってのプロとアマチュアの距離―
筆者は、若者の夢追いを研究するべく、2016 年4 月から現在に至るまで、継続して愛知県に所 在する複数のライブハウスに通い、そこで活動するロック系バンドのミュージシャン(以下、バン ドマン)を対象に調査を行ってきた。その中で疑問に思った…
名古屋大学大学院/日本学術振興会 野村 駿
「プロ」らしさの装い―夢追いバンドマンにとってのプロとアマチュアの距離― より
<コラム> ピアノのお稽古経験はようやく日の目を見るか?―ストリートピアノ
筆者は昨年、近代日本におけるピアノ、箏、三味線と女子のジェンダー規範の関連を扱った『女子のたしなみと日本近代―音楽文化にみる「趣味」の受容』(勁草書房、2019年)を上梓した。そのことで、「実は昔、私(の家族)も、〇〇を習っていたん…
聖路加国際大学大学院看護学研究科 准教授 歌川 光一
「<コラム> ピアノのお稽古経験はようやく日の目を見るか?―ストリートピアノ」 より
連載:音楽とキャリア -人生100年時代に向けて-
第7回:変化の激しい時代に生きる音楽家の学びとは何か
ここ10年ほどで世界は大きく変化しました。スマホが社会生活の中に浸透し、AIが人の仕事を代替するようになった。 こうした社会の変革に対応するためには、人は絶えず学習しなくてはならない。 スマホやPCの新しい機種を使うのにも学習は必要であるし、起業するにしてもこれまでの知識や経験だけでは役に立たないであろう。 変化の激しい時代に生きる我々は、生き続ける限り、学習しなくてはならないのだろうか。 ここでは、生涯学習、学びなおし(アンラーニング)、グループ学習など、さまざまな学習の仕方について考察する。音楽学者 久保田 慶一