活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】地域社会とのつながりを大切にし、音楽を通じて地域の文化を豊かに

(2025年01月29日公開)

地域音楽コーディネーター チューバ奏者 埼玉県 佐藤桃さん

おかわり団メンバー筆者一番右
おかわり団メンバー筆者一番右
■活動テーマ:
地域社会とのつながりを大切にし、音楽を通じて地域の文化を豊かに
■目次:
■活動開始時期:
2002年~現在
■場所:
首都圏を中心に日本全国のホール、公民館、小中学校、特別支援学校、教会他
■対象:
乳幼児から大人まで
■活動内容

1.きっかけと目的

私は中高校生時代、吹奏楽部でチューバを担当したことがきっかけで音楽大学へ進学しました。卒業後、現在プロのチューバ奏者として地域のイベントやコンサートでの演奏を通じて、音楽の楽しさや魅力を広めるために活動しています。

2002年、埼玉県出身の大学同期卒業生7人(ヴァイオリン、トランペット、サックス、チューバ、パーカッション、ピアノとアレンジャー)で「おかわり団」を結成しました。目的は敷居が高いと思われがちなクラシック音楽を一般の方々に生演奏を聴いていただき身近に感じてもらうことです。楽団名「おかわり」には、聴衆が「もう1曲聴きたい(アンコール)、もう一度演奏会に行ってみたい」という気持ちが持てるように願いが込められています。

2.具体的な内容

(1)訪問先とスケジューリング

おかわり団のメンバーは皆プロ演奏家なので、スケジュール調整をしながら活動しています。一時期は大手企業のCSR活動(B.特別支援学校参照)に参加し、その日程を中心に活動していました。他の訪問先は音楽を楽しんでもらえる、あるいは次の時代を担ってくれる子どもたちへの機会は特に重視しています。

またアマチュア音楽家や音楽愛好家とも積極的に交流し、音楽を通じたコミュニティの形成にも力を入れています。結果、プロとアマチュアの垣根を越えた音楽活動が展開していき、地域全体で音楽を楽しむ文化を育むことも考えています。

(2)内容

内容や演奏曲は聴衆の好みを考えプログラムに反映します。これは「おかわり団」の魅力と考えています。おかわり団には専属のアレンジャー内田祥子氏がおります。2002年からおかわり団の全公演のアレンジを手掛け、クラシックからポップスまで幅広いジャンルに対応し特に管楽器を用いた作品には定評があります。多くの聴衆に楽しんでいただけるようにしています。

今年度の夏には、「夏まつり」をテーマにコンサートを行いました。ジブリのメドレーやクラシックの名曲などの演奏に加えて、街頭宣伝といわれる東西屋・広目屋(地域の店舗の宣伝を請け負う広告業者通称チンドン屋)のような懐かしさを演出することも行いました。

A.小中学校

学校への出張コンサートを継続していっています。学校の先生方と事前にプログラムの打合せをし、アンコールでの校歌の演奏は生徒の合唱とのコラボで、私たちも子どもたちの澄んだ歌声に感動をもらっています。今年の12月には山梨県の南アルプスに囲まれた小学校でコンサートを開催予定です。

B.特別支援学校

企業の依頼により14年間にわたり、都立の特別支援学校での出張コンサートを行いました。事前に学校側と内容の打合せを行います。リクエストを聞き、

  1. 生徒の指揮者体験コーナーを設ける
  2. 歌や楽器で合奏をする
  3. 学校の先生をソリストに迎えて1曲披露していただく等、完全オーダーメイドのコンサートを企画・実施しました。

学校側からは「ふだんは長く座っていることが難しい生徒も、コンサートに集中して喜んでいました。」とうれしい感想を頂戴したことも多く、やりがいと音楽の意義を実感したひと時でした。

C.0歳児からのコンサート

おかわり団のコンサートでは、子供がぐずったり泣いたりしてしまっても「お互い様」。多少のことは気にせずに音楽を楽しんでいただくことを大切にしています。小さな子供たちが手を叩いたり、体を揺らしたりして音楽に乗って参加してくれるのはうれしいです。またその姿を見る大人の方が笑顔いっぱいになり、会場全体があたたかい幸せな雰囲気に包まれています。

今年も12月さいたま市のプラザノースホールで『プラザノース de クリスマス』を開催します。0歳児からの「キッズコンサート」と3歳児から入れる「ファミリーコンサート」の2部構成です。小さな子どもから大人まで、家族みんなで楽しめる毎年大人気のクリスマスコンサートです。クリスマスの雰囲気を堪能できる曲を披露する予定です。

3.成果と課題

成果としては、コンサートを開催する前に聴衆の属性・ニーズ等を事前に会場側と話合いを行い企画・内容を決定し、当日の聴衆の反応も参考にして次の企画に反映させてきたことだと思います。今後継続していくには下記の3点の課題があります。

  1. メンバーの確保と維持
    音楽家集団としてメンバーの確保と維持は常に重要な課題です。特に若い世代の音楽家を引きつけ、長期的に活動に参加してもらうための取り組みが必要となっています。
  2. 資金調達
    地域イベントやコンサートの開催には資金が必要です。スポンサーシップなどの寄附、助成金、チケット販売収入など安定した資金源を確保する工夫が求められます。
  3. 地域との連携
    地域社会との連携を深めるため、地域住民や自治体との協力です。地域のニーズに応じたプログラムやイベントを企画し、地域の文化活動に貢献することが更に求められます。

これらの課題に対し、現在おかわり団は様々な取り組みを行っています。例えば若い音楽家の育成プログラムを実施するなど。

4.抱負

上記の課題に対し現在おかわり団は、様々な取り組みを行っています。そのうちの一つは若い音楽家の育成のためのプログラムを充実させ力を注(そそ)いでいます。次世代の音楽家を支援することを目指し、音楽文化の継承と発展を進めたいと思っています。また国際交流にも力を注(そそ)ぎたいと考えています。海外の音楽団体との交流を深めて国際的な舞台での演奏機会を増やすことにより、グローバルな視点での音楽活動を展開できることになります。

最後に、音楽活動はボランティアで演奏をしてほしいと言われてしまう傾向があります。音楽を学んでも職業としては難しいという印象は特にコロナ禍、多く耳にしました。音楽家として適正なギャランティ(報酬)で演奏できる環境や考え方を、我々世代が広める使命があると思っています。地域住民がいつでも気軽にクラシック音楽の生演奏に触れる機会を得るには、このような基盤を作ることが重要と考えます。

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