地域音楽 コーディネーター

地域音楽コーディネーター ドレミファ音楽工房代表 ドレミファ合唱団代表・音楽監督 音楽ユニットamuse(アミュゼ) 愛知県 梅田由佳さん

弥富市内の児童館でのコンサートの様子
弥富市内の児童館でのコンサートの様子
■活動テーマ:
「聴く」を「体験する」するへ。物語が動き出す参加型コンサート
■目次:
■活動開始時期:
2013年~現在
■場所:
弥富市内を拠点に愛知県内の小中学校、児童館、療育施設、病院、介護施設
■対象:
子どもから高齢者、心身に支援が必要な子どもたち、入院患者

1.きっかけ

私たちは演奏家として活動を続ける中で、すばらしい音楽の演奏や響きがコンサートホールという限られた空間の中に居合わせた人にしか届かないことに、もどかしさを感じていました。「音楽が多くの人へもっと身近なものになれば良いのに」「音楽を生活の中に溶け込ませたい」という想いが募り、2017年に、フルーティストの友人と音楽ユニット「amuse(アミュゼ)」を結成しました。

ユニット名の「amuse(アミュゼ)」は、フランス語で「楽しませる」「喜ばせる」という意味です。この言葉通り、私たちの音楽に触れるすべての人が、その瞬間、心から笑顔になれる場を作りたいという願いを込めて活動しています。

2.具体的な内容

(1)音楽ユニット「amuse(アミュゼ)」の目的

大きく分けて2つあります。

①未来を担う子どもたちへの「種まき」

小中学生の中には、まだ本物の楽器の響きを間近で体感したことがない子どもも少なくありません。教科書を眺めてCDを聴くだけではなく、目の前で鳴り響く息遣いや振動に触れることで、音楽に興味を持つきっかけを作りたいと考えています。

➁音楽による「癒やしと解放」

外出やコンサート会場へ行くことが困難な方々にとって、音楽は日常の閉塞感を和らげ、心を解き放ってくれる大切な栄養です。生演奏が生み出す「音の魔法」を届けることで、つかの間の安らぎを感じ、前向きな気持ちになれる瞬間をプロデュースすることを目指しています。

(2)企画にあたってのポイント

コンサート開催のきっかけの多くが、知人やこれまでの活動を見てくださった関係者の方々からのご依頼です。お引受けする際は、「どのような想いで開催したいのか」「参加者の状況」をくみ取り、要望に寄り添った具体的な企画を提示します。丁寧なプロセスが、開催の実現へと結びついています。演奏時間は聴き手の年齢や集中力、体調を考慮し20分~50分程度に設定しており、そのとき、その場所でしか味わえない構成を大切にしています。

(3)内容

上記目的の基、A.小中学校 B.療育施設 C.病院・介護施設 D.幼稚園・保育園・児童館E.地域行事で活動している5つの事例をご紹介します。

A.小中学校―物語が動き出す「主体的・対話的」な鑑賞会

2026年2月に実施した愛知県内の小学校での授業内鑑賞コンサートでは、「白雪姫と音楽のものがたり」と題し、全編を一貫したストーリーで構成した体験型コンサートを行いました。単に音楽を聴くだけでなく、児童が物語の登場人物の一員となって「心で感じ、音の感情を感じ取る力」を育むことを目的として行いました。

【内容】

小中学校で開催する際は、毎回独自の教育的テーマを設定します。例えば、生徒が授業で作曲した曲をアレンジして演奏したり、学校関係者にサプライズ出演をお願いしたりと、学校というコミュニティ全体を巻き込む工夫を凝らしています。

<プログラムの流れと演出のポイント>

〇導入

白雪姫が登場し「静かに演奏を聴くと魔法が届くよ」と語りかけることで、鑑賞マナーを「物語への参加条件」として提示しました。また、プログラムを通して、音楽表現の違いによって生まれる感情の違いを聴き比べる活動を行うため、下記の楽曲を使用して音楽の響きが心の動きと結びついていることを体感できるようにしました。

例えば、
・女王の「嫉妬」:C.サン=サーンス動物の謝肉祭より《水族館》
・森の「不安」:B.バルトーク《ルーマニア民族舞曲》Sz.56
・小人の家で「わくわく」する感情:W.A.モーツァルト セレナーデ第13番K.526 《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》
・魔女がリンゴを差し出す場面の「緊張感」:S.ラフマニノフ前奏曲嬰ハ短調《鐘》Op.3-2

〇クライマックス

毒リンゴで眠った白雪姫を、子どもたち全員の合唱『世界が一つになるまでに』の力で目覚めさせる演出を通し、自分たちの表現が物語を動かすという「体験」を創出しました。結びに、冒頭のE.エルガー《愛の挨拶》を再演し、物語が一周し、最後は「拍手のマナー」を確認し、会場が一体となって盛大に締めくくりました。

プログラムには、校長先生とのピアノ連弾やリコーダー共演という特別な演出を組み込みました。先生が奏でる音色に合わせて子どもたちが声を合わせ、大人と子どもが共に音楽を紡ぎ出しました。その活動を通して、音楽は時代や年齢を超えて人々の心を繋ぐ「架け橋」のような役割をもつことを示しました。.エルガー《愛の挨拶》を再演し、物語が一周し、最後は「拍手のマナー」を確認し、会場が一体となって盛大に締めくくりました。

【成果】

①感受性の育成

音楽を通して登場人物の心の動きを感じ取り、豊かな感性を育みました。

②主体的な学び

歌や手拍子で物語に関わることで、音楽を「自分事」として楽しむ姿勢を養いました。

➂社会性の形成マナーの習得

「魔法の約束」として守ることで、公共の場での節度を自然に身につけました。

B.療育施設―みんなのクリスマスコンサート

2025年12月、愛知県内の発達に心配のある親子が通う保育園でクラリネットとピアノによる、クリスマスコンサートを開催しました。

【内容】

聴覚だけでなく、身体全体で音の息吹を体感できるようなプログラムを構成しました。前半のクリスマスソング『赤鼻のトナカイ』では、子どもたち一人一人が鈴やカスタネットを手に取り、演奏に合わせてリズムを刻む体験をしました。言葉を介さずとも、音の重なりや響きがもたらす心地よさを感じた子供たちの笑顔により、会場全体がパッと明るく包まれました。

特に子どもたちの目を引いたのが、「クラリネットのおはなし」と題した楽器紹介です。クラリネットに実際に触れて、木の質感を確認しました。また、目の前で奏でられる温かみのあるクラリネットの音色を聴きながら、複雑に動くキーの様子を、みんな食い入るように見つめていました。

【成果】

その関心は、終演後のほほ笑ましい光景へとつながりました。興奮冷めやらぬ子どもたちが、示し合わせたわけでもなく自然と電子ピアノの周りに集まってきてくれたのです。楽器紹介では電子ピアノには触れませんでしたが、終演後にそっと触れて、指先から伝わる音の余韻(振動)を感じ取り、子どもたちの表情は喜びで更に輝きを増していました。音を通じて「すごいね」「楽しいね」という感情を共有し、心が通い合う瞬間でした。

C.病院・介護施設―癒しのプロムナードコンサート

地域の医療機関や介護施設において、療養生活を送る方々やそのご家族へ、安らぎのひとときをお届けする活動を続けています。「音楽が生活の中に溶け込んでほしい」という想いは、このような場所でこそ、より切実なものになります。真っ白な壁に囲まれた日常の中に、季節の移ろいを感じる唱歌や、ふと若かりし頃を思い出すような懐かしいメロディを響かせることは、単なる娯楽ではなく、沈みがちな心に明るさを取り戻し、新たな彩りを吹き込む「心を潤す栄養」となるような演奏です。

【成果】

演奏後は、伏し目がちだった方の表情がふっと和らいだり、「ありがとう、元気が出たわ」と手を握ってくださったりします。そのぬくもりを感じるたび、音楽には痛みを和らげ、生きる力を呼び覚ます不思議な力があるのだと確信します。病室や施設という空間にいながらも、日常と非日常の隔たりを取り払い、音の響きを通して「情景があふれる美しい世界」とつながる瞬間を作ることができるように、これからも音を届けていきたいと考えています。

病院や福祉施設では、季節の移ろいを感じる曲や、心が安らぐクラシック曲、耳なじみのある日本の歌を中心に心身の負担にならない音量と寄り添うようなMCで、「癒しの時間」を創出しています。

D.幼稚園・保育園・児童館

幼稚園や保育園、児童館で開催する際に大切にしていることは、子どもたちが一生の宝物になるような「音楽との出会い」をプロデュースすることです。思わず身体が動き出すような楽しい雰囲気作りと、子どもたちの瞳が輝く楽曲選びにこだわり、幼年期における音楽体験の機会を広げています。

集中を途切れさせないための最大のポイントは、客席とステージの境界線をなくす「参加型の仕掛け」です。例えば、子どもたちの合唱がなければ物語が進まないような演出を組み込み、一人一人が「自分がこのコンサートを作っているんだ」という当事者意識を持てるようにしています。また、ヴァイオリン体験などのワークショップや、手拍子、リズム遊びを織り交ぜ、視覚・聴覚・触覚に訴えかけることで、最後までワクワク感が続く工夫をしています。

E.地域行事―青空下のコミュニティ演奏

弥富市内の祭りや地域の行事でも、積極的に演奏を行っています。
野外ステージでの演奏は、ホールのような静寂はありませんが、代わりに「日常のざわめき」と音楽が溶け合う心地よさがあります。家族や友人と過ごす大切な一日を、私たちの奏でる音色で彩りたいです。

3.成果

2月の小学校でのコンサートで参加した5年生35名のうち、実際にコンサートホールへ足を運んだ経験のある児童は、わずか2名でした。この数字がものがたるように、子どもたちにとって直接演奏を聴く「生の音楽」に触れる機会がいかに遠い存在であるかを痛感すると同時に、私たちの役割の重要さを再確認しました。

学校という日常の場で「本物の響き」を体感する機会を創ることは、子どもたちの感性を育む上で大切な一歩になると考えています。終演後、キラキラした瞳で楽器に集まってきた子どもたちの姿は、正にその感性の土壌に、音楽を深く味わう種がまかれた成果だと感じています。

4.課題

一方で、こうしたオーダーメイドの企画を継続していく難しさも感じています。一人一人のニーズに寄り添った質の高いステージを維持するためには、入念な準備が必要不可欠です。今後、より多くの場所で様々な立場の方々の心の中に溶け込むような音楽を届けていくためには、活動を支えてくれる仲間を増やし、地域全体でこの取り組みを支えていけるように継続的な運営体制を築いていくことが大きな課題です。

5.抱負

音楽は、一部の人のための特別なものではなく、日々の生活を彩り、心に寄り添う「栄養」のようなものです。音楽が当たり前のように生活の中に溶け込み、誰もが心豊かに過ごせる社会を目指して、これからも一歩ずつ歩みを進めていきたいです。

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