活動事例

都山流大師範 尺八奏者 和楽器オーケストラあいおい・和魂洋才楽団 Oto Kazze主宰 兵庫県 松﨑晟山(せいざん)さん

テーマ松﨑晟山 MATSUZAKI SEIZAN
■活動テーマ:
邦楽普及と音楽ビジネス
■目次:
■活動開始時期:
2001年(大学院2年)~現在
■場所:
東京都内主要なホール及び、全国の公共ホールなど
■対象:
子供から大人まで
■活動内容

1.きっかけ

幼少期に叔母の箏の会で金屏風(びょうぶ)、毛氈(もうせん)の舞台で紋付き袴(はかま)を着て演奏している尺八奏者の姿を見て、とても格好良く思い、その日のうちに楽屋へ習いたい旨、お願いに行きました。しかし、まだ身体が小さかったことから楽器を持つことができず、小学2年の頃にもう一度お願いしに行ったところ、今度は師匠が大変忙しく追い返され、結局、中学生から尺八を始めることができました。

2.具体的な活動

A.あいおいの会

(1)結成

東京芸術大学を卒業し地元へ帰った際、何も演奏活動ができずアルバイトしかできなかったことから、このままではダメだ!と翌年、大学院修士課程へと進学しました。今度は大学在籍中に何かを始めないといけないと思い、当時の先輩方が行っていた様なユニットを組むなども考えましたが、同じことをするのはどうなのか?と考えた結果、修士課程2年次(2001年)に、古典の勉強会グループ「あいおいの会」を生田流、山田流(箏の流派)琴古流、都山流(尺八の流派)の卒業生6名で始めました。

(2)活動

「あいおいの会」の活動は区民施設の和室で、毎月古典の勉強会を無料で実施するというもので、卒業生が次々と参加し、あっという間に20名以上のグループとなり、勉強会も計50回近く行いました。この活動では古典演奏と曲解説をお客様に聞いていただくというもので、みんな初々しくも一生懸命に取り組んだことを覚えています。

あるとき、お客様からお声が掛かり、身体に障害を持つお子さんたちと一緒にコンサートを手掛けているNPO法人の方で、公演企画を検討してほしいというものでした。今思えば、これが初仕事といえる公演で夏休み期間に中学生へ和楽器指導し、私たちと共演する演目も入れたコンサートを企画しました。

B.音楽事務所勤務

大学院を修了後、ある演奏会の打ち上げ会場で出会った方から某音楽事務所の会長を紹介していただき、お会いすることになりました。当時の活動の様子をノートパソコンでお見せしたところ、何度かイベントでの演奏機会を頂き、その後、コンサートの企画をすることになりました。指揮者に作・編曲家宮川泰氏、衣裳(いしょう)・ヘアメイクをデザイナーのコシノジュンコ氏に担当していただき、浜離宮朝日ホールで「あいおい」のコンサートを実施いたしました。

この後、正式に社員として迎えていただき、様々な仕事を担当させていただきました。

  1. イベント企画の制作や演奏担当
  2. 海外アーティストの招聘(しょうへい)業務
    ウィーン・フィルやベルリン・フィルメンバー、声楽家ホセ・カレーラス、プラシド・ドミンゴなど
  3. 邦楽とのコラボレーション企画、営業
  4. 日本ツアーの制作業務
    テレビ局や新聞社、各地のプロモーター等との調整業務、共演など
  5. 国内外、邦楽・洋楽・ポップス・ジャズ・CD製作(約20年間)

また経理関係の業務にも携わり音楽業界を知ることができました。それらの経験の中では天災の影響は大きく、中止・延期となってしまう公演や、大小様々な失敗をしてしまうこともあります。また、小さな事務所内での人間関係もいろいろと経験することがありました。しかし、これらの負の要素を経験したことも、今となってとても有意義な経験であったと思っています。

C.和楽器オーケストラあいおい

(1)「あいおいの会」改名と自主公演

音楽事務所勤務時に「あいおいの会」を「和楽器オーケストラあいおい」に改名し、都内の様々なホールで自主公演を実施してきました。兵庫県立芸術文化センター大ホールでのオープニングシリーズ公演やテレビの音楽番組「東福寺音舞台」に出演させていただきましたが、ここまでは様々な人脈で実現したイベントだったため、自身で全国のホールへ営業に出かけることで、邦楽のコンサートを手掛ける難しさや、一から作り上げる公演の達成感とその背景にある人間関係の大事さに気づくことができました。

▼You Tube
和楽器オーケストラあいおいPV

(2)港区文化芸術フェスティバル

このフェスティバルでは、書類審査後、審査員の前でプレゼンテーションし採択されました。半年間、区民参加者へ合唱、日本舞踊、箏、三味線、尺八を指導する講師を藝大(げいだい)の仲間に担当してもらい、フライヤー作成は自身が区民と一緒に作成しました。舞台、音響、照明など、専門家による講習などを企画し、1,000名以上の区民参加によるイベントを手掛けました。その他、学校公演や企業イベント、国際サミットなど様々なシーンで企画・演奏に携わり現在に至ります。

発足メンバーでもある新福かな(箏・三絃奏者)と結婚し、これまで支え合いながら活動をしています。またグループ内での結婚も多く、仕事もプライベートも共に歩み、来年で25年を迎えるとても仲の良い団体です。

3.最近の活動

A.ZAKURO SHOW

訪日外国人(旅行者)を対象とした和楽器ライブ。毎年、春・秋に約20~30公演実施し、トリップアドバイザーの東京・音楽部門で第一位となっている人気のライブシリーズです。来季からは海外の旅行会社の日本ツアーのオプションプランにも掲載されることになっています。

B.古典の練習CD制作

コロナ禍の時期、これまで毎年実施してきたイベントが全て中止となり、ほとんど収入源がなくなりました。ここで新しく始めたのが、古典の練習用CD(Let′sひとりで三曲合奏♪)製作です。箏・三味線・尺八を自宅の別々の部屋で同時に録音し、どの楽器もカラオケにできるものを作成し、全国の愛好家の皆さんの合奏練習に役立ててもらいました。

C.和’on Music Studio

コロナ禍で始めたスタジオ運営、箏・三味線・尺八の他に、英語リトミック、ピアノ、ヴァイオリン、ギター、ウクレレ、ストリートダンスの教室の運営や発表会や動画撮影用にレンタルスタジオなどの業務を手掛けています。

D.和魂洋才楽団Oto Kazze

元々、何となく構想として描いていたユニットを始めました。箏・ヴァイオリン・尺八・ギター・ピアノの5人で、ジャズ、ラテン音楽、ポップス、クラシック、邦楽と音楽ジャンルを問わず、全く新しいアレンジで演奏するユニットです。昨年から兵庫県芸術文化協会の登録アーティストとして県内の学校公演や公立ホールでの公演を中心とし、ライブ活動やCD製作などを行っています。

和魂洋才楽団OtoKazze PV(県民芸術劇場)

E.一般社団法人Oto倶楽部

2022年8月8日に一般社団法人Oto倶楽部を設立し、音楽事務所としての業務や自身が主宰する「和楽器オーケストラあいおい」「和魂洋才楽団Oto Kazze」のマネジメント業務を行っています。

F.各省庁との取り組み

<国土交通省>

  • ・Visit Japanキャンペーン
  • ・パリ、ベルリンにおける日本大使館公邸でコシノジュンコさんのファッションショーと共演。
  • ・羽田空港第2ターミナル内覧会
  • ・羽田空港第2ターミナル内覧会出演(オープン前イベントに出演)

<文化庁>

  • ・子供たちの伝統文化の体験事業
  • ・地域における子供たちの伝統文化の体験事業
  • ・伝統文化親子教室事業(地域展開型)
  • ・学校巡回公演
    令和6年より学校巡回公演の制作団体・実施団体として採択され、兵庫県と四国全域を担当し、「和楽器オーケストラあいおい」のフル編成で実施しています。

これらの文化庁の事業における再委託事業者として兵庫県、岡山県で地域の伝統文化(華道、茶道、書道)の地域の先生方と一緒に和楽器体験、日本舞踊体験、歌舞伎衣裳(いしょう)体験、和楽器製作職人による講習などを手掛けてきました。

<経済産業省>

  • ・一般社団法人全国邦楽器組合連合会
    これまで24年間のお付き合いをしていただいている「お琴屋さん」が所属する組合が一般社団法人となり、経済産業省との事業を展開していることから、来年、大阪万国博覧会で9月2日〜4日までの3日間、演奏とワークショップを担当することになりました。現在、この事業における企画、制作業務を一緒に取り組んでいます。

4.総括

演奏者は、時に周りの方々に支えられ、ステージに立てていることを忘れがちになる面もあるかと思われます。私はこれまでの全ての経験から、お客様に楽しんでいただくことはもちろんのこと、イベントに携わる全ての方々の尽力によって、演奏者が集中して最高のパフォーマンスを発揮できると思っています。

より良いパフォーマンスをする上で、演奏家自身が楽しいステージだと感じることがお客様へも伝わり、そのような公演ができたとき、主催者、舞台スタッフ、表周りスタッフ、イベント当日までの様々な制作業務や、イベント終了後の業務も含めて、とてもやり甲斐(がい)のある仕事に感じられることと思います。

演奏のみに集中できる方もすばらしいことだと思いますが、後進の指導や音楽にまつわる様々な仕事ができることもとても幸せなことだと思います。

5.抱負

これからも一般公演、学校公演、イベントステージなど、邦楽や様々なジャンルの活動をして行きたいと思いますが、最近出会った方との新たな伝統文化の普及活動や訪日外国人を対象として活動しているZAKURO SHOW、そして、来年の大阪万博を新たなスタートし、海外公演を主催する事を視野に入れた取り組みをしていきたいと考えています。

「新しい方角(邦楽)」は日本の伝統音楽の新しい道を探るコラムです。
詳しくは下記をご覧ください。

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