生涯学習音楽指導員

活動事例 生涯学習音楽指導員

【事例紹介】こころと音楽

(2021年04月06日公開)

全国生涯学習音楽指導員 心理カウンセラー
東京 安藤恵美子さん

■活動タイトル:こころと音楽
こころと音楽イメージ写真(バラ)
■日時:2016年~現在
■会場:東京都中心及び地方
■対象:幼稚園児から高齢者まで

■活動内容

【1.動機】

長年音楽、ピアノを教えるという仕事の中、生徒からの悩みを数多く聞く機会があり、その度「どうしたらいいのか?」と一緒に悩んで来た経験がありました。

そこである日、音楽療法と心理学を学びましたが、学問だけでは目の前で悲しんでいる生徒に対して何をする事もできませんでした。再びどうしたら良いか考えた末、直接性のある心理カウンセリングも学び、功を得たことでピアノ教師兼心理カウンセラーとなりました。これも私自身の生涯学習です。

現在、心理カウンセラーという特性を活かし、音楽教育の現場で見聞きする「心の悩み、問題」にアプローチする方法を考えるようになり活動しています。

【2.指導者としての基本的な考え方】

人が交流する、ここには何らかの心の変化が起き、教師と生徒も一つの出会いであり、そこには大きな心の動きがあります。教えるという事には、「育てる」という大きな役割が生じ、責任も伴います。そういった意味では「教える」立場にある者は、技術のみ伝授すれば良いと言うものではありません。特に音楽を教える環境下では、生徒から大きな信頼を寄せられていることが容易に想像できます。これは生徒の将来に大きな影響を与える一人であると言う事です。

教える立場にある時、相手(生徒)は心を持った人間です。技術、能力を育てると共に心も育てています。従って指導者は心も育むことを意識し、自身も心についての学び、人間理解の学びを深めておくことが必要と思います。

【3.具体的なカウンセリングの一例】

〇ピアノを長年教えている知り合いのピアノ教師Bさんからの相談

「学校に行く事ができない生徒(A子さん)を教えているが、レッスン内でどう関わったら良いのか? 少しでも良い方向に向けるようにしてあげたい」という相談が寄せられました。

※A子さん:中学2年生の女子 準引きこもり数ヶ月 ピアノレッスン 週一回

〇A子さんの母親よりの相談

「娘が最近どのような理由か分からないが、学校に行かれない日が多くなってしまった。ピアノのレッスンにはちゅうちょなく出かける。どうしたら良いものかいろいろ考え接しているが」という内容

<Bピアノ教師へのレクチャー>

(1)A子さんの気持ちを把握し、理解してあげる事

  1. 「A子さんは怠けているわけではなく、学校に行くことからのリスク回避をしているだけでしょう。本人が話したければ内容を話してもらえば良いと思います。ただし必要だからといって質問攻めにして無理に理解しようとしない方が良いのでは?」
  2. 「レッスン室で先生と過ごすことは本人にとって安心安全な場なのだと察します。その中から未来を考える気力を得てもらう事、目標を持つことが一番大切な要素と思います。もちろん支えてくれる人も必要ですが」など

(2)具体的な改善方法

七ヶ月後に発表会があるということで一つ目の目標をそこに設定し、下記の3点をポイントに置きました。
  1. 目標達成をレッスンと発表を通して味わってもらう
  2. 努力の継続により「心的強度」をつける
  3. 隔世世代の時間の共有を有効に使う

B先生が兼ねてから力を入れている連弾も取り入れることにしました。
ステージでソロ演奏1曲と連弾(曲目は二人で相談してもらう)

(3)実施にあたっての留意点

A子さんご家族への説明と協力をお願いし快諾を得ることが重要ですが、この場合、事前に家庭環境を把握しておくことも大切です。
  • 自宅に祖父がいるとのことなので「隔世世代のコラボレーション」を選択。これはA子さんだけではなく祖父母世代の生涯学習に繋がります
  • 祖父と孫の『理屈抜きのとにかく優しい』心の関係
  • 祖父母の時間の使い方の柔軟性
  • 親の関わり方とはまたひとつ違った関わり方

<結果>


数百人収容できる公共ホールで発表会が開催されました。ご両親が観客席で心配な様子、またステージ袖ではこのためだけに一緒に練習してきた祖父が不安そうに見ている中、A子さんはソロと連弾共々納得のいく演奏ができ、達成感、満足感と共に自信を得ることができました。

終了後、ご両親、祖父と互いに称え合い高揚した笑顔が見え、ご両親は感激感涙、またA子さんの同級生も出演、その友人も聴きに来ていてA子さんを称えたそうです。この一時が彼女の心に大きな変化を起こし、その後不登校に改善がみられたとのことです。

【4.所感】

このケースは、A子さんの準引きこもりを改善しようとした事を目的としたものではありません。目標を持って継続すること、自分ではなく周辺に目を向けられるようにと考えた事です。祖父母世代も生涯学習としての良いきっかけとなったと思います。また多くのピアノ学習経験者は小さい頃習っていてさまざまな理由で中断していた人でも、このような機会を与えられる事で再び戻りやすくなると思います。

演奏することで、より音楽への関心を高めることができ、何らかの困難があっても「音楽を一緒に」という形態を通して少し楽に乗り越えられます。自分のためではなく、「人のために」ということはパワーが湧き、それが大切な人のためであったらなおさらです。

【5.抱負】

演奏する事で、他の人から拍手をもらって讃えられることは誰でも至上の喜びであり、次へのステップを踏み出すきっかけになります。先に書きましたように教師との出会いによって生徒の心や生活は非常に大きく左右されます。どのような目的にせよ、音楽を教える側は生徒の心にも大きな影響を与えているという認識が必要です。

心に寄り添うことができる音楽は、一生涯寄り添ってくれる強力な仲間であります。音楽の経験値は、中断があっても再び始める時に大いに役に立ち、音楽は自分の発露でもあると思います。音楽を通して豊かな心を育み、それが生涯続くことを意識し教育に携わって行きたいと思っています。

音楽は心を通わせるため、心を動かすための強力なスパイスなのです。

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