活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】『朗読と即興』〜あなたは今、この瞬間に生まれる世界の証人になる!〜

(2021年12月27日公開)

地域音楽コーディネータ― 大阪吹田市 清野三樹子さん

■活動テーマ:『朗読と即興』〜あなたは今、この瞬間に生まれる世界の証人になる!〜    
■日時:2020年7月〜現在
■場所:吹田市 Live Bar TAKE FIVE Osaka 月1回 100分
■対象:一般 計10〜20名

■活動内容

1.活動を始めた背景と目的

学生時代に演劇をしていたこともあり、以前から生の言葉の力を信じていました。近年、人と人との直接のコミュニケーションを感じられる場が減り、その大切さをあらためて実感しています。

夫である清野拓巳の即興演奏には、聴く人の想像力を掻き立てる不思議なストーリー性があると感じ、朗読による「言葉の響き」と合わせればどうなるんだろうという興味を以前から持っていました。

2020年、世の中はコロナ感染収束が見えず誰もが大変な思いをしていました。音楽家として今しかできない特別なことをしたいという想いが募り、中止が繰り返されていた清野拓巳のソロギターライブの再開を機に、 この『朗読と音楽』のコンサートを企画・開催に至りました。最初は一度限りの予定でしたが、参加者より予想以上の反響をいただき、定期的に続けることになりました。

2.具体的な活動内容

(1)活動目標

  1. 言葉と音を通して自由に想像力の翼を広げ楽しんでもらう場の実現
  2. 日常から離れた異空間で自分だけの世界に浸ってもらう時間の提供
朗読とギター即興演奏の組み合わせが相乗効果を生み出し、上記の目標を達成できるように考えています。

(2)参加者募集

現在は広く告知せず、「TAKE FIVE Osaka」にて来場者の人数制限の上、電話もしくはウェブサイトからの予約を受け付けています。一度ご参加くださった方々が何度も足を運んでくださり、少しづつ認知されてきたように感じます。

(3)内容

短編集から毎回1話ずつ朗読しています。物語は、とても長いものから1ページで終わってしまうような短いものまであり、プログラム内容は月によって大きく異なります。例として、第13回(2021年8月開催)の内容をご紹介いたします。

大きく2部で構成されており、第二部は朗読とギター即興演奏です。

<第一部> 50分

  1. 即興演奏(ソロギター)
  2. 『Moon Song-August』曲 清野拓巳 (鍵盤ハーモニカとギター)
    8月にまつわるオリジナル曲
  3. 『Hikaru55』曲 清野拓巳 (鍵盤ハーモニカとギター)
    8月に誕生日を迎えるマスターへ献呈
  4. 『The Bridge』曲 清野拓巳(朗読、鍵盤ハーモニカとギター)
    前回の朗読コンサートから生まれたオリジナル曲
※毎回即興でコンサートを行なった後、その”残り香”が消えないうちにギタリストが曲を作り、それを次の月に演奏しています。

<第二部> 朗読とギター即興演奏 50分

題材はミヒャエル・エンデ(*注)の短編小説から選び、朗読とギターの即興演奏で行います。想像を自由に膨らます事ができる、音楽的で豊かなストーリーが散りばめられた、とても魅力的な作品です。

ギタリストとの事前の打ち合わせや練習は一切せずに、本番で初めてお互いの音を聴き合い感じながら進めます。ただ朗読するのではなく、お話の世界を参加者と共に旅するような気持ちで読んでいきます。

音楽もBGMとしての即興演奏ではなく、一緒に物語を紡いでいくような感覚です。そこには即興演奏ならではの、自分たちでも思いもよらないような奇跡の瞬間との出会いがあります。 間や時間経過を感じながら、今この瞬間に生まれる新たな世界を発見するような体験も共有していきたいと思っています。

*注 ミヒャエル・エンデ:ドイツの児童文学作家(1929年~1995年)代表作は「モモ」「はてしない物語」等。長野県信濃町の黒姫童話館に多くの資料が展示されている。

● 清野拓巳
http://www.takumiseino.com

● Live Bar TAKE FIVE Osaka
https://www.live-takefive.com


3.聴衆の反応

参加者からは、「日常生活では普段体験できない不思議な時間だった」という声をいただいています。また、「日頃悩んでいたことや自分自身と向き合う機会になった」とお話してくださった方もおられます。

これをきっかけに読書に目覚めたという方も多く、本を先に読んでからコンサートに参加するのか、あえて読まずに先入観無しに参加するのかを、楽しそうに語り合っている光景はとても印象的でした。

会場のオーナーからは、コロナ禍で普通のコンサート開催が厳しい状況の中、「こうして毎月決まったテーマに沿ったイベントを静かに楽しんでいただける企画を継続していけることは意味のあることですね」と言っていただき、音楽家としてやりがいを感じます。

4.課題とその対策

現在最大の課題は、やはりコロナ禍対策です。いかに安全を保ち安心して楽しんでいただけるかを最優先に考えています。会場のスタッフの皆さんは、最大限の感染対策をして迎えてくださっています。幸い比較的広い会場ですので、入場制限の上ソーシャルディスタンスを保って開催できています。

今後も感染状況の動向を見て対応していかねばなりません。今は焦らずに一つ一つのコンサートの機会を大切に、全力を注ぎ長く継続していくために工夫していきたいと思います。

5.今後の抱負

「音楽」「本」「演劇」は、私の人生で好きなものベスト3です! その3つの要素を融合させたような活動を今こうしてできていることに、とても幸せを感じています。

今後は、もっともっと即興音楽の魅力を幅広い年齢層の方たちや、まだライブハウスへ足を運んだ事がない方たちにも広く伝えていきたい! という夢がどんどん膨らんでいます。

<現在温めている企画>
  • ①児童文学を題材に選び、幼稚園児〜小学生の子供たちを対象に曜日や時間を設定。決して子供向きのコンサートにするのではなく「朗読と即興」の世界を子供たちにも体感して欲しい。
  • ②これまでの参加者の中に「自分で物語を書いてみたい!」と意欲を見せてくれている小学生がいます。是非舞台で発表したいと思っています。これは面白いものになりそう! 今から私自身ワクワクしています。

6.最後に

昨年(2020年)、どん底に落ち込むような経験がありました。長く音楽指導していた愛着のある楽器店が倒産してしまったのです。そのような状況の中、この朗読という活動は真っ暗だった私の心の中に小さいけれど暖かく灯る“一本の蝋燭”のようでした。

今年に入り、他店やホールからもお声をかけていただくことが増えてきています。コロナ禍をきっかけに活動の場が少しずつ広がっている状況は、自分でも不思議な感覚です。これから先、たくさんの蝋燭が灯り心の中が暖かさで満たされていくように、精進していきたいと思います。

音楽は本来、同じ空間や時間を共有することで喜びや感動が膨らむものだと思います。コロナ禍におけるコミュニケーションのあり方が問われる今、そういった音楽本来の魅力を追究すべく、集まってくださった方々と共に作り出していければと願っています。



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