活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】フォルクローレ音楽を通じた街づくり&人づくり

(2022年11月20日公開)

地域音楽コーディネーター 南米民族楽器演奏家
栃木県 高山直敏さん

■活動テーマ:フォルクローレ音楽を通じた街づくり&人づくり
音魂祭
音魂祭
■活動時期:2022年8月20日(土)、21日(日)
■場所:塩原もの語り館ステージ、塩原小中学校
■対象:全国の(*音楽愛好者、塩原温泉観光客
■主催:音魂祭実行委員会

■活動内容

1.ケーナに出会ったきっかけ

中学生の時に近所のショッピングモールでケーナ(*1)のコンサートを聴いたのがきっかけでした。素朴で力強いケーナの音色に惹かれ、その後、ケーナを親に買ってもらいましたが、当時は教えてくれる教室もなく、レコードを聴きながら独学で演奏技術を習得し、来日コンサートがあれば出向き、楽屋で現地の演奏家に吹き方のコツを教えてもらうこともありました。

多くの日本のフォルクローレ(*2)演奏家とも知り合いになり、ステージ演奏にも声をかけてもらうようになりました。専門学校時代にパラグアイ音楽に出会い、アルパ(インディアンハープ)のきらびやかな音色と伴奏のギターのリズムの美しさに魅了され、伴奏者としての道もスタートしました。結婚後、田舎暮らしに憧れ家族で栃木県那須塩原市に2003年に移住し、地域の方々とのつながりを作るためにインターネットラジオやレストラン経営など様々な活動を通じて、10年以上かけて演奏家であることを地域の方々に周知してもらえるようになりました。

2007年ころより始めていた音楽教室を県内5か所に拡大し、ケーナのみならず弦楽器も加えたアンサンブル演奏の指導に重きを置き、生徒たちだけで演奏グループを組めるようにしています。現在ではそのグループが県内各地で地域のイベントなどで活躍しています。演奏技術を教えることも大切ですが、同じ楽器を愛する仲間同士のつながりを作るお手伝いができることを嬉しく思っています。

*1)ケーナ:ペルー、ボリビア等アンデス地方が発祥の縦笛。楽器の材料は昔、葦だったが、現在は竹や木を使用している。この楽器の有名な曲は『コンドルは飛んで行く』(ペルーの作曲家ダニエル・アロシア=ログレスによって採譜された曲)1970年、アメリカのフォークデュオ「サイモン&ガーファンクル」によってカバーされ世界中に知れわたった。

*2)フォルクローレ:ボリビア、ペルー、エクアドルのアンデス諸国の民族音楽をさす。楽器はギター、チャランゴ、マンドリン、ヴァイオリン、アルパ等の弦楽器とケーナ,サンボーニャ、ロンダドール等の管楽器と打楽器のボンボ等を扱いアンサンブルする。先に書いた『コンドルは飛んで行く』の他に『花祭り』が有名。)


2.具体的な活動―音魂祭開催

(1)きっかけ

夏祭りや盆踊りのような、音楽の夏祭りをしたい!という想いからスタートし、最初は近所のレンタルスペースを借りて開催していました。折しも2011年という誰しもが忘れることのできない年に始めたのは偶然ではあるものの、ちょうどその年に復興支援イベントを開催したレンタルスペースのオーナーと出会ったこともきっかけの一つでした。

その後、まるで南米の山脈や自然を思わせる、那須塩原が誇る塩原温泉に場所を移し、豊かな自然の中でお客様にフォルクローレを楽しんでもらうと同時に、地域の方々にももっと塩原温泉に足を運んでほしいという想いもあります。また出演者も当初は県外からの旧知のグループに声をかけていましたが、現在では私の生徒たちを中心とし、県内で活躍するアマチュアのフォルクローレグループに出演してもらっていますが、将来的には塩原温泉の住民が気軽に出演できるような、フォルクローレを通じたまちづくりを目指します。そのためにも生徒たちのアンサンブル指導により一層力を入れています。

(2)内容

出演者の平均年齢は比較的高く、50代から70代が中心になっています。皆さん演奏を始めたきっかけはさまざまですが、やはり素朴なケーナの音色に魅せられた方が多いと思います。

私の教室の特徴ですが、最初はケーナを習っていても、アンサンブル演奏を見るうちに他の弦楽器や管楽器に興味を持ち、複数の楽器を習い始める方がほとんどです。また、音魂祭出演を目標に一年間練習を重ね、その成果を披露することも楽しみにしてくれています。

(3)出演者や聴衆、自治体の反応

「出演者」

3年ぶりの開催、とにかく楽しんでいただきました。人前で演奏すること、仲間とセッションすること、何もかもが楽しいという感じでした。今回初めて参加した生徒たちも常に興奮状態で、会場そばの旅館に泊まった人たちは夜遅くまで演奏やお話に興じたようです。

「子供たち」

短い練習期間にもかかわらず、夏休みも返上で練習してくれました。当日は準備から出演者へのインタビュー、フィナーレの踊りなど、大活躍!リハーサルでは緊張のせいか、実力が発揮できなかったものの、本番ではお客様の前で堂々たる演奏。予想外のアンコールがあり、本人たちも大変驚いていました。その後、他の演奏も聴いていくうちにどんどんと顔つきが変わり、終わるころにはとても自信に満ちた顔になっていました。

「学校」

全校生徒でも100名に満たない小中一貫校の生徒たち。加えてコロナ禍で外からの刺激が少ないと常々学校からは聞いていました。開催ギリギリまで本当に開催できるのか、何度も話し合いを持ちましたが、「ぜひ子供たちに成功体験をさせたい!」という校長先生の熱い想いから実現できました。

今回、フォルクローレの盛んな福島県川俣町からの先輩たちが演奏にきてくれましたが、今後、川俣町の子供たちとの交流(オンライン授業や演奏交流)を検討しています。音魂祭をきっかけに演奏する喜びや人と交わる大切さを学んでもらえたら嬉しいです。

(4)実施にあたって

とにかく感染状況の収まらない新型コロナの影響で本当に開催すべきかどうかを悩みました。以前は小中学校でのべ300名のお客様をお迎えしていましたが、さすがにそこまでの大人数が一堂に会すことは難しいと考え、一日目は演奏場所を2会場で時間をずらす、2日目は小中学校で子供たちの演奏をメインとし全体の開催時間を短くするという、来場者の分散を試みました。

もともと塩原温泉の皆様には受け入れていただいているイベントですので、観光協会や販売店等にチラシを持参しても「あ!またやるのね!」とあたたかく迎えていただきました。今までは演奏と共に南米料理などの出店もお願いし、好評いただいておりましたが今年は飲食の提供はしませんでした。しかし、開催時間の工夫をしたことでかえって温泉街の飲食店へ足を運ぶ方も多く、結果としては良かったのかとも思っています。

3.課題

地域、特に塩原温泉との連携をもっと高めたいと思います。住民の方々を巻き込むことで音楽を通じた街の活性化、町おこしにつながる方法を実行委員会で考えていく必要があると思います。その結果として運営費、広告宣伝が紐づいてきます。

4.今後の抱負

イベントを行うだけの活動は決して継続発展はできません。日ごろの活動がイベントに繋がると確信していますので、教室での指導を更に発展させていきます。また、演奏技術だけではなく、人前で演奏するためのマナーやトークのアドバイスなどにも力を入れています。フォルクローレは「民衆の音楽」です。誰もが手軽に楽しむことのできる音楽をいかに伝えることができるか音魂祭の発展につながると思っています。

●公式ホームページ
https://www.pentagrama.jp/音魂祭-1/


(2022年11月20日公開)

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