地域音楽コーディネーター クラリネッティスト 東京都 新村尚子さん
- ■活動テーマ:
- 子どもの日常の中に生の音楽を届けるアウトリーチ・コンサート
- ■目次:
- ■活動開始時期:
- 2020年~現在
- ■場所:
- 東京都区内の子ども家庭支援センター、保育園などの保育施設
- ■対象:
- 乳幼児親子、未就学児
- ■活動内容
1.きっかけと目的
私は大手楽器メーカーの音楽教室でクラリネット講師として活動する傍ら、小編成オーケストラ団体に所属し、日本各地の0才から入場できるコンサートや小・中学校等で演奏してきました。子どもたちは音や音楽に対する感受性が豊かで多彩な反応を示してくれました。この経験を通し演奏家として生演奏を届ける意義を感じました。
その後、転居と出産でライフステージが変わり、より地域に密着した形で、近くの子どもたちに音楽を届けたいと思うようになりました。転居先で演奏家仲間をみつけるところからスタートし、地域の音楽家協会で演奏家たちと知り合いました。その中のメンバーが以前から近隣の子ども家庭支援センターで定期的にコンサートを開催しており、プログラム充実のために楽器を増やしたいとのことでお声がけいただきました。現在、保育園などの保育施設他より演奏依頼があり訪問演奏しています。
2.具体的な内容
(1)生演奏の利点
現在インターネット等でも気軽に音楽を聴くことができる時代になりました。しかし音は空気の振動で伝わっていきます。演奏家にとって子どもたちが毎日生活している場で生演奏を通して音楽に直接触れ実感してもらえることは双方意義があると思います。それは生演奏ならではの一方通行ではないコンサートを創ることができるからです。
- 子どもたちは演奏者の息遣いが視聴覚を通して感じられる
- 演奏者は実際に顔を合わせることで、その時々の子どもたちの反応を見ながらコミュニケーションをとれる
- 参加者同士の場を共有することで生まれる一体感を感じてもらう
(2)演奏メンバー
子ども家庭支援センターでは、歌・ピアノ・クラリネットの3名で演奏しています。時にはヴァイオリンやフルートに代え、予算に応じて人数を増やし編成を変化します。保育施設では上記の編成の他に、コントラバスとクラリネット、アコーディオンとクラリネットといった珍しい組合せでも演奏をしています。再編成することでいろいろな音や楽器に触れる機会を設けています。
(3)内容
先方から時期、日程を希望され、それに沿って曲目や演出を演奏者で考えていきます。時間は休憩を含み60分くらいです。リクエストが多いディズニーやジブリの曲を入れつつ、季節に合わせた「うみ」や「虫のこえ」といった唱歌、クラシック曲(「口笛吹きと犬」、「サウンド・オブ・ミュージック」等)、音楽に合わせて踊れる曲(演奏者も参加者と一緒に踊ってます)を選曲しています。また子ども家庭支援センターは0~1歳の親子で参加される方がほとんどなので、親のリラックスタイムとなるように「ゆりかごのうた」、「パッヘルベルのカノン」等のゆったりした曲や、親子のスキンシップが図れる手遊び・リズム遊びのコーナーを設けたりしています。
(4)参加者の反応
場時と退場時では子どもたちのまなざしが違っているのを感じます。演奏中だけでなく退場する私たちをずっと目で追っている子、私たちの後をハイハイで追いかけてくる子もいます。まだお話ができない月齢の子どもでも何か感じるものがあったのでしょう。保護者の方より「立っちしました!」や「こんな反応を見たのは初めてです」といったことを聞くこともあり、子どもたちの成長に立ち会えたことをうれしく思います。
3.成果と課題
成果としては、子ども家庭支援センターより継続的にご依頼を頂き、また入場予約はすぐに一杯になると伺っております。散歩の範囲で来られる距離の場所や毎日過ごしている保育施設で、生演奏が聴けることは需要があると実感しました。
課題としては予算面での余裕を作ることです。コンサート回数を増やしたりバラエティーに富んだ編成も考慮し、助成金や補助金を活用する可能性も視野に入れていきたいと思います。また子どもの集中を保つには演奏面の充実は欠かせません。選曲・演出のアイデアを出すための情報を集めること、また様々な編成に対応できるよう自分で編曲をしており、(一般市販の楽譜は余りありません)そのための時間確保も重要です。
4.今後の抱負
現在はクライアントからの依頼に応じて演奏をしていますが、今後は私より積極的に他の保育施設に企画を提案し、演奏を届けられる場所を増やしていきたいと思います。そのためには私たちの存在を知っていただくことが第一かと思います。転居して間もなく新型感染症が流行したことで、街になじむチャンスが持ち難く、思うような動きができていませんでした。私自身子育てをしてみて子どもの時間は本当にあっという間に過ぎてしまうと感じました。乳幼児期という短く貴重な時期の日常に、演奏を届けていく活動をこれからも続けていきたいと思います。
(2024年2月20日公開)
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