地域音楽コーディネーター 教員 いわて ユースジャズスタディ実行委員長 岩手県 柿崎倫史さん
筆者最前列の一番左盛岡バスセンター3FCafé Bar West38にて
- ■活動テーマ:
- 未来の地域音楽はどうなっているだろう
- ■目次:
- ■活動開始時期:
- 2024年~現在
- ■場所:
- プラザおでってリハーサル室、岩手県公会堂、盛岡バスセンター3F Cafe Bar West38他
- ■対象:
- 25歳以下
1.きっかけ
若い頃からジャズに興味をもち、大学生になってからは盛岡の名店ジャズ喫茶「ジョニー」(*1)で演奏させてもらう機会があり、多くの社会人の先輩にお世話になりました。
*1)ジャズ喫茶「ジョニー」:https://www.andtrip.jp/article/004485.html
「アドリブ(即興演奏)はこうするんだ」「今日のピアノ良かったよ」と言われたこともあり、演奏させてもらえる場、セッションをする場でジャズの楽しみを体感し、また多くのことを学びました。
教員となり、また地域音楽コーディネーターとして、この地方都市盛岡の音楽文化を考えたときに、自分と同じように「ジャズを演奏したいけど、どうしたらいいか分からない」という若者が多くいるように見受けられました。そこで私の経験も含み勘案した結果、ポイントは演奏の仕方をどう学ばせるか、演奏の場所をどう確保するかの2点に絞りました。
まず演奏の仕方についてです。自分の中高校時代はジャズが好きでもジャズ研はなく、吹奏楽部に在籍していました。(当時は地元の大学にもジャズ研はなく、私が卒業後に設立されることになる)。アドリブの方法を学びたい、できるようになりたいという強い気持ちがあっても勉強する方法が見つからず、もどかしかった思い出があります。当時はインターネットもSNSも黎明(れいめい)期で今のように情報収集はできませんでした。大変もどかしかった思い出があります。
次に、演奏場所についてです。当時盛岡でライブを企画している社会人の人たちはたくさん折、憧れて見に行ったこともあります。そのとき、自分が演奏者として「ステージ側」にいくにはどうしたらいいのか?このあたりも誰かに手ほどきしてもらいたかったです。大学生になってから、幸い人の出会いに恵まれ、定期的に演奏させてくれる場所を見つけることができ、しかも、稚拙な演奏に付き合ってくれる優しい場所でした。
プロドラマーの弟と盛岡の音楽事情について話していたとき、地域音楽コーディネーター養成講座で培った助成金を活用して事業を行うことが頭に浮かび、その後、実行委員会を発足し講座「いわてユースジャズスタディ」を開講する運びとなりました。
2.具体的な内容
(1)「いわてユースジャズスタディ」の目的
①岩手県は県土が広く、興味があっても演奏会やレッスンにリーチできない若者もいることを想定し、盛岡に限定せず全県から募集する。
➁若者を対象にすることで名称を「ユース」とし、音楽文化の「これから」を育て音楽文化の裾野を広げる。
➂学びの要素を入れるため「スタディ」を名称の中に含む。
ライブやセッションは「さあ、演奏するぞ」という気概が必要ですが、そのような人材は既にインターネットで学び始めていると考え、今回は「どうすればいいか分からない」と迷っている人を対象にしているため、しっかりと学べるというアピールをしました。
(2)対象年齢
上限25歳を対象としました。理由は、目的の②にあるように
①大学のサークル活動から卒業後、演奏から遠のいてしまう人に機会を提供する。
➁義務教育段階からジャズに触れる機会を作る。
(3)運営資金―助成金の活用
我々の企画は公益的な側面を持ち合わせているため、助成金は獲得できると確信し、受講者の参加料を減額し敷居を下げ、入会しやすいようにしました。
(4)講座内容
8月〜12月まで月に一回ジャズプレイヤーを招聘(しょうへい)し、基本的に3時間程度の講座を開催しています。半分は座学、半分はセッションのような実践形式で構成しています。正統派=ストレートアヘッド(*2)なジャズに限らず、門戸を開くように対応し、吹奏楽のソロや、ロックバンドのギター・ソロにも通じるようにと狙っています。
*2)ストレートアヘッド:フュージョンやロック等、他ジャンルが入らないスイングの上に即興演奏を重要とした伝統的なジャズの種類。カウント・ベーシー楽団等が有名。
(5)演奏の場
講座成果の発表の場として、主体的にコンサートを開催する力を育成します。講師やスタッフが手ほどきをしながら、バンドの結成からリハーサルの仕方、本番前のモチベーションの高め方などを教えていく機会を設けました。発表会ではジャズギタリストのラインハルトとジャズヴァイオリニストのステファン・グラッペリ曲「Minor Swing」、フランク・シナトラが歌って大ヒットした「Fly Me To The Moon」、スティービー・ワンダー曲の「Isn’t She Lovely(可愛いアイシャ)」などジャズ・スタンダード(スタンダード・ブックに載っている曲)を中心に、1バンド3曲程度発表します。
レベルの高いバンドにはコンテンポラリーな曲も多少混ぜ、講師・スタッフのデモンストレーション演奏を発表会の最後に行っています。バンドの編成は参加者のレベルなどによって、バンドに一人は演奏やライブに慣れている人を入れ、イニシアチブをとってもらいます。
(6)募集
講座募集は学校や公共機関へのフライヤー配布とウェブ広告の二点で行っています。受講条件は「楽器ができて楽譜が読めること」としていますが、オーディションはなく、柔軟に対応しております。また、いつからでも参加OKです。ドラムやアンプなどは毎回運営で用意しています。
3.成果
フライヤーとSNSでの周知で参加者は40名ほど集まりました。最初としては、まずまず集まったと言えると思います。一番の成果はヨコのつながり、タテのつながりを作ることができたことです。ふだんは学生生活や仕事などで、それぞれの「ジャズを演奏したい」という思いを抱えながら生きている人たちが、一堂に会する※場所を提供できたことは主催者としてうれしく思います。
講座の充実はもちろんですが…実は休憩時間や片付けのときのたあいない会話を見ていると、そこで見える笑顔が印象的です。高校生や大学生が一緒になってジャズについて「どの演奏が好き?」「これ聴いたことありますか?」や同じ楽器を演奏している先輩・後輩での情報交換をしている姿があり、またふだんの学校生活についての話題などもありました。地域音楽は場所と人であり、そのことに関わる活動ができて良かったと思います。
4.課題
課題は「持続可能」これに尽きます。今までは助成金を活用してきましたが、それも毎年確約されているわけではありません。また、今はフットワークの軽い多くの大学生スタッフがサポートしてくれていますが、彼らも卒業・就職していくと運営はかなり難しくなります。近隣大学のジャズ研究会のご協力に頼りすぎている面もあります。自分自身も教員としてほとんど実務には関われていない現状なので、しっかりとした組織体制作りが地域音楽普及の鍵であるとつくづく感じる昨今です。
5.抱負
部活動地域移行により、文化芸術愛好家の数が減少していくのではないだろうかと懸念しています。吹奏楽や合唱など学校で行ってきた音楽活動に関わる人が社会に出た時に「興味がある音楽に触れられる場所」に参加できることが余暇の選択肢としてあったほうが良いと思います。首都圏や大都市では選択肢があるのは当たり前かもしれません。しかし、地方都市の人たちにもその豊かさを享受してほしいと願っています。例えば20年後、20歳だった若者が40歳になったときに、仕事や育児の合間を縫って、セッションを企画し、音楽と笑顔があふれる場を作る、そんな場面を思い描いています。
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