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【事例紹介】ワンチームで責任ある仕事を!~一般社団法人設立経緯と介護予防事業についての報告~

(2021年04月22日公開)

全国生涯学習音楽指導員協議会 九州支部会員
一般社団法人石内音楽療法研究所代表 石内貴代美さん

■ 活動タイトル:ワンチームで責任ある仕事を!
 ~一般社団法人石内音楽療法研究所設立経緯と「介護予防事業」についての報告~
■ 日時:2013年~現在
■ 場所:福岡県古賀市、篠栗町、新宮町、須恵町の公民館、
    健康福祉施設、社会教育施設など、約50会場
■ 対象:65歳以上の一般高齢者(要介護・要支援認定がない高齢者)

■ 活動内容

【1.一般社団法人設立の経緯】

私は自宅でピアノやフルートを教えながら、地域の障害者施設・精神科病院のディサービスで音楽療法を実践していましたが、2006年の改正介護保険法で示された予防重視型システムへの転換という流れの中で、近隣市町に「介護予防のための音楽教室」の提案をしておりました。徐々に講師依頼や新事業の相談が増えましたが、

ⅰ) 今、行っていること・提案していることは介護予防に有効なのか?
ⅱ) 講座を休まなくてはならない時はどうするか? 等

さまざまな悩みが多くなってきました。そのような経緯から、責任ある仕事を継続、推進していくためには、介護予防に有効な「プログラム」と、それを実践できる「チーム」をつくる必要があると考えるようになり、一般社団法人石内音楽療法研究所を設立しました。


◎一般社団法人石内音楽療法研究所(以下、法人)について

♪設立:2013年4月
♪設立費用:定款手数料、登記印紙代、行政書士報酬などで約30万円
♪組織体制:役員2人、社員3人、委任契約講師8名(役員・社員兼任)、研修生数名
委任契約講師は、音楽療法士・生涯学習音楽指導員の有資格者です。
http://ishiuchi-music-therapy.jimdo.com/

【2.一般社団法人にした理由とそのメリット】

  1. 非営利という点ではNPO法人と同じですが、違う点は税制上の優遇が無いということです。しかし、設立時の役員数や、設立後の活動内容から鑑み一般社団法人にしました。
  2. 法人という顔を持つことは社会的責任が発生します。講師派遣の体制をつくり保険にも加入しました。依頼主のニーズに合う活動のコーディネート力、実施結果の説明力、そのためのプレゼンテーション力や文章力等など、音楽以外の幅広い「能力」を求められます。しかし、それに応えるために必要なことを学び、習得の結果、(これは正に自分自身の生涯学習です)依頼先からの信用につながり、自治体や社会福祉法人と契約を交わした上で委託事業を請け負うことができるようになりました。
  3. 現在、自治体からの委託で、介護予防・地域人材育成・障害者福祉事業、それに伴うコンサートやイベントの実施、その他、社会福祉法人の施設音楽療法、各種団体研修での講師、地域の自主サークル等支援、法人主催の音楽教室などを行っています。
今回は自治体からの委託事業である「介護予防事業」について、当法人の取り組みをご報告いたします。

【3.指導にあたっての留意点】

一般的に、公民館等での音楽活動は、集団歌唱を中心にしたレクリエーションの一つとして楽しく実施されることが多いようです。当法人の一般高齢者介護予防教室も受講者の笑顔が多い楽しい講座です。

一般高齢者は元気で意欲満々です。機能低下防止の介護予防トレーニングだけではなく、更なる向上を求めて学習機会を探しておられます。そのような対象者に「生涯学習」の講座は受け入れやすいようです。

指導者として
  1. 知的好奇心の充足と音楽的なスキルの向上を目指せるような講座を計画し、その学習の過程に心身機能の維持向上、社会性の保持・生きがい作り仲間作りに向けて集団力動がうまく働くよう「音楽療法的操作」を仕組みます。
  2. 介護予防の目的を達成するために「音楽療法の手順」(アセスメント⇒目標設定⇒プログラム設定⇒実施⇒記録⇒評価)で進めます。
  3. 音楽の活動は概ね楽しい時間で、たまたま良い結果が得られることも多く、我々は勘違いすることが多いです。
しかし、税金を使った事業ではそのような「偶然性」ではなく、目標と結果に「整合性」が必要です。また、私たちはグレーゾーン対象者の早期発見も重要な役目だと考え、集団や個人の記録を関係者と共有していきます。もちろんのことですが、守秘義務順守!です。

【4.具体的な内容】

Ⅰ.法人に委託された介護予防事業

①公民館等での音楽サロン(スポット開催事業)

楽器や機材を会場に持ち込んで行う講座です。講師は2人体制です。
独居や社会とのつながりが薄い高齢者に、おしゃべりや音楽で楽しい時間を過ごしていただきながら介護予防の啓蒙をします。季節の楽曲、懐かしい楽曲を使い、集団歌唱、楽器の活動、生演奏の鑑賞などを行います。

②公共施設等での音楽サロン(継続的活動)

一般高齢者を広報等で募集し、年度20回程度の講座を行います。
講師は2~3人体制です。歌唱・器楽・音楽鑑賞など多彩な活動で心身機能の維持向上を図るとともに、演奏技術の積み上げをしながら最終回には発表会を行います。また、他の事業とコラボレーションして、いろいろなイベントやコンサートに出演することもあります。


③キーボード教室(継続的活動)

鍵盤楽器の初心者(一般高齢者)を広報等で募集し、年度20回程度の講座を行います。
演奏技術の向上、余暇活動や生きがいづくりを支援しながら、心身機能の維持向上を目指します。
講師は2~3人体制です。この事業は卒業後に継続を望む声が多く、地域の自主サークルや、法人の高齢者音楽教室に継続して参加され、自分自身で介護予防(自助)に取り組んでおられます。

④人材育成事業

「日常生活支援総合事業」の推進に伴い、地域サロン活動などのリーダーを育成します。
12回程度の講座と実習を行い、音楽レクリエーションの指導法を伝達するとともに、講座終了後にボランティア活動が円滑にできるよう「一緒に活動する仲間づくり・活動する場所・活動に必要なソフト」などをコーディネートします。講師は2人体制です。

Ⅱ.これからの介護予防事業


皆さんご存知の通り2000年に施行された介護保険法は、介護給付の増大に伴い、2006年予防重視型システムへの転換が図られました。全国の各自治体において、「介護予防事業」は必須事業になったわけです。そして2015年の改正で、「日常生活支援総合事業」として、地域の力を求められています。

このような流れの中で我々の役割は、今までのような高齢者集団歌唱活動の「指導者」という立場から、地域に音楽学習の場を作る、人材を育成するなど、日常生活支援総合事業の「自助」「互助」推進に向けて、音楽活動コーディネーターへと変わってきたと感じています。

【5.今後の課題と対策】

①Withコロナの新講座とプログラム作り
今、コロナ禍の下で音楽の活動を行うことはどこも大変な状況です。当法人もいろいろな事業が中止になり苦しい状況が続いています。昔の固定概念を捨てて、新しい頭で介護予防事業を考え直すことが喫緊の課題です。

②地域に自主運営のサークルを作り、支援をする。
日常生活支援総合事業に我々の音楽が貢献していくためには、
1) 介護予防教室卒業後の受け皿となるサークルを作ってアフターフォローする。
2) サークルを自主運営にするための人材育成
3) 卒業生以外の新メンバーを巻き込む工夫

非営利の法人を作り、地域の中で音楽療法やさまざまな音楽活動の窓口となった今、社会の変化に応じた新しい音楽活動を具体化・提案し、広く伝えていくことの使命を大きく感じています。そのために、今後もチームのみんなで学びあい、学び続けたいと思います。

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