活動事例

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【事例紹介】市民グループ主導の音楽活動へのプロボノ

全国生涯学習音楽指導員協議会東京支部会員 武谷あい子さん

■ 活動テーマ:市民グループ主導の音楽活動へのプロボノ
■ 日時:2018年6月~現在
■ 場所:南大泉地区区民館(東京都練馬区)(2021年3月現在)
■ 対象:コーラスグループ「はらっぱ音楽隊」メンバー
(年齢、音楽歴 不問)

■活動内容

【1.活動を始めたきっかけ】

自身の音楽活動(作曲・編曲・演奏)で培った経験をもとにプロボノ(*1)参画できないかと思い、一般の音楽愛好者との音楽活動を始めました。

競争社会の空気に行き詰まりを感じていた状況でもあったので、音楽をシンプルに楽しんでいる人たちとの時間を共有したかったことが大きく作用していたかもしれません。居住地域で音楽活動に参加する方々と交流を続けた結果、年齢層やジャンルを限定して音楽的交流を試みているわけではないものの、合唱を好む年配の方が多かったように思います。

今回ご紹介するグループとは、間に知人を2人挟んで合唱練習のピアノ伴奏を依頼いただいたことをきっかけに、活動を共にするようになりました。

(*1) プロボノとは:pro bono publico(公益のための)の略。職務上の知識・技術を生かして行う奉仕活動。プロボノワーク(小学館デジタル大辞泉より抜粋)

【2.活動の目標】

コーラスグループ「はらっぱ音楽隊」は、別の市民合唱団と掛け持ちで参加するなど音楽的な素養があり、活動に慣れているメンバーで構成されています。おそらく若い頃から歌うことに親しんでいらっしゃるからでしょう。

活動目標というと、区民ホールなどでコンサート発表の場を設けることなどが通例です。「はらっぱ音楽隊」は地域の自治活動に携わる方の集まりでもあり、その活動を啓発するイベント「白子川源流まつり」(詳細後述)の主催団体を母体としているため、そのイベントの特設ステージで数曲実演し節目を感じる機会をお持ちです。ただしこの「イベントへの参加」は、目標というより「友人同士が楽しんで歌うこと」の原動力として設けていらっしゃる機会であるように思います。

目に見える指標としては、歌唱で得られる高揚感、達成感を持つといったところではないでしょうか。伴奏者兼指導員としては、彼らが既に歌う楽しみを充分ご存知でグループカラー(持ち味)があることから、特に指導目標は設けず「メンバーの楽しみを邪魔しない」よう心がけています。

【3.具体的な内容について】

(1)指導ポイント

「はらっぱ音楽隊」では毎月第4日曜日の午前中に、120分間の練習を行っています。楽譜がある程度読めて、耳が声をコントロールすることを肌で知っていることから、練習では以下の5点に重きを置いています。

  1. 健康的で無理のない発声、滑舌の向上(簡単な準備運動や呼吸法に伴う筋トレ等は含まず)
  2. ソルフェージュ(初見視唱)で音高基準を確認
    • デュエット(アンサンブル)中心
    • 初めて見た譜面でも声を出し、音の重なりをつかむ
  3. 楽曲の成り立ち、歌詞の理解
  4. 歌唱表現の引き出し作り
    • 楽譜の理解
    • 和声の動き、拍子、速度、フレージングの作り方など
    • 歌詞のない音を音楽的に表現する
  5. 先入観を崩す「気づき」を持つ
    • 「気づき」を持つことで演奏での不安を解消する

(2)レパートリーについて

グループに指導員として参加し始めた当初は、長く活動しているグループなので、彼らのレパートリー(以下)を伴奏しながら補強が必要なポイントを探しました。

  • 『大きな古時計』ほか童謡、民謡
  • 『ケ・サラ』(ジミー・フォンタナ、カルロ・ペス)
  • 『大地讃頌』(佐藤眞)
  • 『おお、ひばり』(メンデルスゾーン)
  • 『プサルム第5番』(メンデルスゾーン)
  • 讃美歌『神は わがやぐら』(ルター)
  • 『二人の擲弾兵』(シューマン)
  • 『小さな木の実』(ビゼー)
  • 『アヴェ・マリア』(カッチーニ)
  • 『アヴェ・マリア』(アルカデルト)
  • 『心の四季』より『風が』(高田三郎)
  • 『水のいのち』より『雨』(高田三郎)
  • 『信濃の旅』より『旅のおもい』(小山章三)
  • 『夜のうた』(佐々木伸尚)
以上のレパートリーを伴奏し、即座に「歌うことが好きだ」ということを聴き手にダイレクトに伝えることができるグループだと分かりました。とにかくその表現力や可能性の大きさから、伴奏パートを原曲の曲調と違えたり声部編成を変えたりといった編曲を施しつつ、新しいレパートリーにも取り組んでいます。

(2019〜2021年)
  • 『アヴェ・ヴェルム・コルプス』(バード)
  • オラトリオ『キリストの幼時』より『羊飼いたちの別れ』(ベルリオーズ)
  • 『ハード・タイムス・カム・アゲイン・ノー・モア』編曲版(フォスター原曲)
  • 『蛍の光』ジャズ・バージョン(スコットランド民謡)

宗教曲から、クラシック、果てはポップスまで取り上げる幅広いレパートリーは、グループの音楽活動の歴史の長さを物語っています。おのずと、グループの色を濁らせないことが選曲のポイントとなりました。

外国語詩の曲はレパートリーの観点からも魅力的ではありますが、話せない(耳に馴染んでいない)言語の場合、メンバーの強い希望がない限り除外しています。長く聞き覚え暗譜暗唱できる曲なら話は別ですが、 視覚・聴覚で体内に取り込んだ音を再現できないと、音楽表現まで持っていけないことが理由です。それゆえ「はらっぱ音楽隊」には日本語詩、ラテン語詞、英語詞のいずれかの歌詞を持つ曲を選び、歌うことを提案しています。

「ふと口ずさんでいることに気づく曲か否か」も選曲ポイントのひとつに数えています。楽曲すべてを、ではなく、部分的にAメロを歌っていることに気がついてサビを思い起こす感覚に近いかもしれません。

楽しんで歌ってもらうことを念頭に、理論的なことは必要以上取り上げず、ハードルを下げることなくクリアするための技術を身につけてもらえるよう練習メニューを組んでいます。今後、健康面での安全性を確保できるようになったら、発声練習に本腰を入れることも考えています。

【4.地域の団体について】

今回当報告の執筆依頼をいただくきっかけとなった、「はらっぱ音楽隊」と共に参加してきた「白子川源流まつり」は、白子川源流域の川をめぐる自然や文化を創出する諸活動をしている「白子川源流・水辺の会」が主催する文化イベントです。

イベントは年に一度、練馬区の大泉井頭公園(おおいずみいがしらこうえん)で、川(源流域)に生息する生き物の生態観察や環境整備などの啓発を兼ねて開催されています。ステージが設置され、地域の小学生による川に関する研究発表や音楽グループの演奏を行い、イベントに訪れた人たちを盛り上げます。

音楽イベントではないにもかかわらず、スタンドマイク、電子キーボード、スピーカー、PA機材を揃え、これまでに木管アンサンブルやコーラス、その他地域のグループがステージでイベントを盛り上げてきました。

「水辺の会」に携わる方々が青空の下、このイベントで歌うためにご友人たち同士で結成した「はらっぱ音楽隊」では、メンバーに加わっていただける方を常時募集しております。

歌うことが好きで、毎月第4日曜日午前10時〜12時の定例練習(会費あり/毎回徴収)に参加していただける方であれば、年齢、音楽歴は一切不問です。日曜日の朝活の一環として一緒に歌ってみたい方、ぜひ下記問い合わせ先までご一報の上で一度見学にお越しください。ご連絡をお待ちしております。

「はらっぱ音楽隊」
連絡先 : 菅沢博(すがさわ・ひろし)さん
電話 : 080-5683-2366
メールアドレス : suga-lohas@jcom.home.ne.jp

【5.今後の課題と抱負】

2020年は、コロナ禍の影響で練習に集まることができませんでした。これは、合唱における感染リスクに加え、練習会場の長期休館がネックとなりました。区の財政悪化や今後の社会状況によっては、区営施設を現在のように低額利用できなくなる可能性もゼロではないでしょう。

オンラインレッスンやビデオチャットでのアンサンブルなどを併せ利用すれば良いかとも考えましたが、受信側のインターネット環境やデバイスの機能差、デジタルリテラシーの差、低音質や通信ディレイなどの現象、心理的距離感の遠さを理由にオンラインレッスンを好まない方も少なくないため、これまでの形態で状況に応じ活動を続けることにしました。したがって、①低額利用可能で、②音出しに対する苦情が発生しない、③健康面において安全な練習場所を手配できるか、この3項が引き続き活動の原則になると考えています。

さまざまな理由から退会する方もいらっしゃいました。「はらっぱ音楽隊」は混声四部、各声部が揃っているものの少数なので個人の声量負担が大きく、メンバー増員の必要を感じ、常時募集しています。

第20回「白子川源流まつり」も開催中止となり、イベント形態を変え、ホームページ上で「ネット源流まつり」が開催されました(2020年11月30日終了。2021年3月現在は「白子川源流 小さなミュージアム」として発信中)。

特設ステージはリアルイベント以外では設けられていません。グループメンバーの意思次第となりますが、これまでステージで歌っていた代わりに演奏動画を作成し、コンテンツ公開で活動の幅を拡げることを目指すことを考えるいい機会ではあると思います。しかしその場合は、収録会場選びにおいて、先にあげた3つの条件をクリアしなければなりません。

停滞している現状、今後の課題としては、とにかく感染症対策のガイドラインを常にアップデートし実施すること、活動を広げることよりも練習機会を安定供給できる方法を考えること、そして何より「音楽をシンプルに楽しむこと」を抱負として活動してゆきたいと考えています。

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