生涯学習音楽指導員

活動事例 生涯学習音楽指導員

【事例紹介】「歌で繋ぐ心のネットワーク」

生涯学習音楽指導員 長野県松本市 木次由美子さん

■ 活動のテーマ:「歌で繋ぐ心のネットワーク」
NO.1 プラチナ大学受講生
NO.1 プラチナ大学受講生
■ 日時:1985年~現在 週4日
■ 場所:松本市第二地区、大手地区、波田地区、里山辺地区の公民館
松本市社会協議福祉会、松本市シニア大学講師・(現在はプラチナ大学に名称変更)
NHK文化センター、由音の会 各所公民館
■ コンサート会場:まつもと市民・芸術館
■ 対象:40代~80代

■活動内容

1.活動を始めたきっかけ

35年前の世情は、経済も安定し日々の生活に「ゆとり」ができ、青春時代に学ぶことのできなかった人達が「学び」を求め、カルチャーセンター通いがブームとなりました。

特に音楽に対して疎遠だった人達が「カラオケ」という機器に接し、音楽の楽しさを実感し世界中にカラオケ文化が生まれ、一世を風靡した時代でした。

<カラオケ講師として>

私はエレクトーン講師として販売店で指導していた際、カルチャースクール(中日新聞社)からカラオケ講師としての依頼があり、引き受ける事になったのが最初のきっかけです。

趣味で歌を楽しもうと目覚めた方々との関わり合いの中で「歌」を通じて仲間同士とのコミュニケーションが深まりました。また歌で自己主張をし、その上賛美の拍手まであり、大人気の講座へと発展いたしました。

<生きがい講座の講師として>

その頃、松本市の政策として「健康寿命延伸都市宣言」を行い健康寿命の延伸に繋がる人と社会の健康づくりを目指していました。各地域公民館主導で地域の特色を生かし「熟年体育大学」「生きがい歌唱講座」等の企画があり、その一環で私が「生きがい講座」の講師を担当する事になりました。

  やがて老人大学の年間講義の中にも「歌」の講義を取り込み、「音楽の授業」をすることになったのです。(青春時代に音楽の授業がなかった皆さんの学びの場所だからでしょうか、人気の高い講義です。)このような経緯を経て現在に至ります。

2.私の活動ポリシーと目標

「音楽は国境を越える!」との言葉もあるように、私達にとって音楽は心の解放を導き、心を繋ぐことのできる最良の手段です。年齢・ジャンル・全ての壁を取り払い心の赴くままに音楽の流れの中に自分を見つけてもらう、そのお手伝いをするのが私の活動ポリシーです。

大きな目標としては、歌は「自分磨き」と定義し、楽しみと健康維持の努力を惜しまない事です。

3.具体的な活動内容

生きがい講座と由音の会の活動二つをご紹介いたします。

A.生きがい講座

年間を通して受講生を募集し各公民館 定員25~40名程度(掲示板や回覧板で周知)
  • ・レッスン回数:月二回 二時間の集団レッスン ピアノ使用
  • ・受講者数:20~35名 4グループ(年間登録制・定員ありの公民館もあります)
  • ・指導者:私ほか合唱指導者1名 オカリナ奏者1名 聖歌隊3名
  • ・選曲:指導者主導 他受講生のリクエスト

(1)目標

受講者の大半が高齢のため、「健康維持・呼吸・脳トレ」等を柱に歌唱指導をしておりますが歌唱力の向上は余り期待できない事が残念です。

しかしそれ以上にできないことを可能にするチャレンジ精神・勇気が沸き「生る力」を感じることができ、心身共に向上。仲間意識の強調。それらが生きがい講座の目標です。

(2)指導の流れ

我々指導者は音楽を教えることはもちろんですが、まず楽しく歌うという環境作りが大切です。そのためには受講者の健康状態を「声」でチェックし、理想的に体を使うことを指導いたします。それは継続することにより一層可能に近づきます。

  • Step1. 沖縄民謡「童神」の歌を使い、歌唱ストレッチより始めます。心拍数と同じくらいのテンポで呼気を意識しながら腕を片腕ずつ上にあげ背筋を伸ばす→片足ごとの体重移動→脇腹・横筋伸ばし→上半身・下半身のバランス調整→整息。
  • Step2. 5分間のゆったりストレッチで筋温も上がり、呼吸も整い、歌うための有効な歌唱ストレッチです。ナチュラルVoiceを目指し、全身の筋肉を緩め、歌うための準備が完了します。
  • Step3. 季節感のある歌・童謡・等 受講生のよく知っている簡単な曲を使い、発声練習を兼ねて歌います。(30分)
    <四季を歌う・マンスリーソングスを制作し全員に持ってもらい、それを使用>別途添付No2 (5P)
  • Step4. 課題曲紹介・・・曲の背景・リズム・歌詞のリズム読み・全体構成等の説明後1フレーズの反復練習。全体を通し難しい場所の反復練習→完成。
  • Step5. オリジナルソング制作
    受講生より公民館讃歌をとの要望で、詞を募り楽曲制作。歌に合わせ健康体操も考案し、各地域の拠点として心の拠り所となり歌い継がれております。他受講生からのリクエストや流行歌等、ジャンルを超えて歌います。

<オリジナル曲>

受講生の作詞に私の作・編曲で下記のオリジナル曲が生れました。
  • ・松本市市制施行100周年記念曲 「ふるさとは百彩」作詞 田中栄一

  • ・第二地区公民館讃歌 「せせらぎに寄せて」作詞 深沢弘信
  • ・元気応援ソング 「笑顔のプレゼント」作詞 祖父江律子
  • ・南郷福祉ひろば開館10周年記念曲 「やすらぎ(ひろば讃歌)」作詞 浅輪賢治
    (一般社団法人 音健アワード2019特別審査員賞 受賞・体操ミュージカルバージョン)
  • ・受講者オリジナル 「人生やじろべえ」作詞 田中栄一
    (月刊「歌の手帳」作詞部門優秀賞)
  • ・(株)ニッキトライシステム社歌  「熱きおもい」作詞 田中栄一
  • ・自立支援サークル愛唱歌 「心音の里」作詞 細野 麗

B.「由音の会・いいうた いろいろ」

  • ・レッスン回数:月二回(集合個人)二時間の個人レッスン
    ピアノ・キーボード・CD使用
  • ・受講者数:70名(年間登録制)
  • ・選曲:受講者主導(演歌・シャンソン・アメリカンポップス 他)
    添付写真ありNO.3(個人レッスン シャンソンを歌う)

(1)発足のいきさつ

公民館・カルチャースクールなどで「受講者に楽しみの時間を自主的に作ろう」と言う意義の基、慈善団体として松本市に登録し会を発足しました。

「由音」とは音楽愛好者と私のコラボレーションで作り上げ、私と奏でる音楽と言う位置づけのネーミングです。まさに皆さんとの意思疎通の基に生まれたメロディーは多くは、私の音楽人生の宝石です。いつまでも輝き続け人々に音楽の楽しさを歌い繋いで行ってほしいものです。

(2)目標

私が音楽の扉を開ける役を担い、受講生へは下記の4つを体験してもらう様に心がけています。
  1. 共通の趣味で社会参加、喜びを共有する
  2. 自己表現ができる
  3. 音楽が架け橋になり豊かな人生を送れる
  4. 幸福感・達成感のある音楽活動が実践される
    受講年数も10年以上の方が70%位を占めます。ライフサイクルの中に「歌」が定着し、人生の喜怒哀楽を歌で楽しむ!「自分軸」で回る音楽の世界!なんと理想的な人生でしょう。

    これまでに五回のチャリティーコンサート・松本市保健センター定期コンサート・福祉ひろばコンサート・自立支援サークル「ひこばえ」(脳梗塞による言語訓練)ボランティア活動 等福祉活動にも積極的に参加して参りました。

(3)指導の要点

個人レッスン指導が中心で、受講者の希望する楽曲をピアノ使用でマンツーマンレッスンです。歌は底辺が広く、童謡唱歌・一般大衆歌謡・J.POP・アメリカンPOP・ゴスペル・シャンソン等々「歌」=自分磨き、と位置づけ個性を生かす「個声」作りと、Voiceトレーニングを中心に歌唱指導。

歌の扉 →
  • ・正しい発声でナチュラルヴォイス
  • ・呼吸法&姿勢・個声磨き・歌謡の為の筋トレ
  • ・滑舌・リズムトレーニング
  • ・表現力・オリジナリティー
  • ・歌を通じた協調等

4.カタクリコンサート

(1)コンサート命名について

「カタクリ」は山野草ですが、春一番に色鮮やかな深紅花びらをつけ、二週間ほどで地中に戻り、根に栄養を蓄え来年の開花に備えるという花です。 私達の成果発表のステージのように、一年間の学びが実りとなり、毎年自分らしい花をつけますように!との願いで、「カタクリコンサート」と命名し34年にわたり継続して参りました。

(2)2019年11月16日 第34回コンサートの様子

平成から令和へと新年号に相応しい中島みゆきの「時代」の大合唱でオープニング!老若男女(20~80代)の歌声は新年号に相応しい生き生きとした歌声で会場に響き渡り、「歌は世につれ 世は歌につれ」の言葉のように音楽が心を結んだステージとなりました。

受講者の愛好する歌のジャンルとして「沖縄ソング」が多いこともあり、「異文化交流・琉球国まつり太鼓」の皆様をゲストにお招きいたしました。静粛の中、ドラが響き渡り一瞬の緊張が解け心地よい太鼓の響き・空を渡る歌声、ご来場者の心は一時の沖縄空中散歩を味わったことでしょう。 最後は「カチャーシー」(沖縄の方言でかき混ぜると言う意味です。)喜びや悲しみを皆で分かち合おうと言う踊りで、参加者もステージに上がり大いに盛り上がりました。
2020年はコロナ禍の為コンサートは中止いたしました。

(3)参加者の反応

34回のコンサートに、私達の学びの成果を毎年楽しみ来場して下さる方が大勢おります。演奏者の「歌への熱い情熱」は観客からの惜しみない拍手に励まされ、達成感で満面の笑みに表出され、喜びと生涯学習の意義に「自己実現」を味わうステージとなりました。

また、沖縄ステージは大変好評で「心の開放感」を味わったとの感想でした。異文化交流は、音楽により「心の絆」を結んだ魅力一杯のステージとなりました。

5.成果と課題

音楽力の向上が一番と思いますが、実際は音楽に接することがスタートです。その上に基礎的な知識を指導しながら、受講者に音楽は楽しい事を理解していただく必要があります。「世界に一つしかない楽器」を奏でるための条件を満たし、その上での向上と言うことになります。

長年指導を続けてきた今、受講者から教えられ、気づかされたこと多々あります。試行錯誤をしながら皆と共に研鑽を積んできた結果が現在の姿に反映されていると思います。それは何よりも多くの皆様が「歌」で楽しみを味わえるようになったからです。

運営面では各地域公民館に、健康作りを目標に歌う講座が増えた事、地域を超えて多くの仲間が歌で繋がり成果発表会ができたことは大きな成果です。

今後の課題としては高齢化社会が急速に進んでいる中、歌=健康作りの実践を継続し、より良い指導法を開発していく事です。

6.今後の抱負

昨今「コロナ」という新たな試練の中、心身共に健康に留意しなければならない状況ですが、音楽の持つ役割を生かし、歌を通じ多くの人々と生きていく力を培って参りたいと思います。

人は文化がないと心が枯れてしまう!このコロナ禍で痛感しております。

生涯学習の意義を自問自答しながらの音楽人生ですが、受講生の成長も嬉しい事ですが、自分自身も「音楽人」として成長できた事も、音楽と共に生きてきた証です。


四季を歌おうマンスリーソングス 曲目集

いいうた・いろいろ

Monthly Songs

1月 ♪一月一日 ♪童神~天からの子守歌~
2月 ♪早春賦 ♪青い山脈 ♪白もくれん
3月 ♪春歌メドレー(春の小川 春が来た)♪さくら ♪いい日旅立ち
4月 ♪花(唱歌) ♪上を向いて歩こう ♪うりずんの頃(沖縄ソング)
5月 ♪こいのぼり ♪遠くへ行きたい ♪花(沖縄ソング)
6月 ♪みかんの花咲く丘 ♪エーデルワイス ♪若者たち
7月 ♪夏の思い出 ♪浜辺の歌 ♪真夜中のギター
8月 ♪知床旅情  ♪少年時代 ♪野に咲く花のように
9月 ♪あざみの歌 ♪旅愁   ♪誰もいない海
10月 ♪故郷の空  ♪学生時代 ♪あの丘越えて
11月 ♪茜色メドレー(里の秋・旅愁・紅葉・赤とんぼ)♪リンゴの歌
12月 ♪クリスマスソング(きよしこの夜)日本語→英語 ♪花は咲く
愛唱歌 ♪ふるさとは百彩♪笑顔のプレゼン♪誰故草

受講者の時代を反映した曲を中心にリストアップしてあります。(歌詞・メロディーが脳裏に記憶されており当時の思い出と共に歌うことができるからです。)

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