活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】音楽は、今日への感謝、明日への希望

(2022年11月28日公開)

地域音楽コーディネーター ボーカリスト ボーカル講師
千葉県 長谷川由里香さん

■活動テーマ:「音楽は、今日への感謝、明日への希望」
3人のおばさま方
3人のおばさま方
■活動開始時期:2000年~現在
■場所:千葉、東京、茨城
■対象:園児~80代

■活動内容

1.活動を始めたきっかけ

ボーカリストとしてライブハウス、レストランやパーティーイベントなどで演奏する傍ら、地域で幅広い年代に対して『ポピュラーボーカル』『ジャズボーカル』『ゴスペル』のクラスで歌の指導をしています。歌うことは楽しく、気持ちが良く、心と身体を整えてくれることを実感しています。

また私自身が音楽を通して、人生のさまざまなことへの気づきをもらいました。テーマに書きましたように、皆が音楽から自分の今に感謝をする気持ち、そして自分の未来に希望を持つ気持ちを感じられる事を多くの方々へ伝えたいという目的で活動しています。

今回は、それぞれの事例を基にご紹介いたします。


2.具体的な活動

(1)指導目標

歌うことを楽しむことが根底にありますが、目標は
  1. 新しいことを知る楽しさ
  2. できなかったことができるようになる喜びを実感していただく事
です。

生徒さんは幼児から80代まで幅広い年代の方がおり、ひとりひとりの目的、年代、個性に合わせた指導を心掛けています。レッスンは月1回~月3回の方までさまざまで、グループレッスンは60分から90分、個人レッスンは30分から60分です。『ジャズボーカル』クラスでは、スタンダードジャズ(*1)を歌います。

もう一つの目標は日頃の成果を発表する場を設けています。今までは年1回ライブハウスやコンサートホールを借りて、生バンド(ギター、ピアノ、ベース、ドラム)をバックに発表会を開催していましたが、そこに年2回ピアノ伴奏のみでステージに立つ機会も増やしました。


*1)スタンダードジャズ:ミュージシャンによって長い間演奏され、聴衆に末永く親しまれている曲をさす。ジャズミュージシャン自身が作曲した『ラウンド・ミッドナイト』(セロニアス・モンク曲)の様な曲と、シャンソンの『枯葉』(ジョセフ・コズマ曲)やミュージカルから生まれた『マイ・ファニー・バレンタイン』(リチャード・ロジャース曲)を素材とする曲の二つに分かれる。

(2)受講者の例

① 83歳男性Aさん、ジャズボーカルクラスの生徒さんのケース

毎回のレッスン時、スーツをビシッと着こなし、素敵なお帽子を被っていらっしゃいます。話し方も穏やかでとてもダンディ。私のクラスの発表会は「歌詞を覚えて歌う」という約束があり、この方も毎回暗譜してステージに立たれます。

十八番は『You’d be so nice to come home to』(*2)や『Summertime』(*3)です。

この様な素敵な出で立ちで歌われる姿はほかの参加者の憧れです。「あんな風に歳を重ねたい」「自分も頑張ろう』と、まわりの方々の目標になっています。

Aさんもその様に言ってもらえたら、嬉しく励みになっていると思います。そして、まわりの方々も素晴らしい刺激を受けています。ここに相乗効果が生れています。希望溢れる未来に繋がっていると実感します。

*2)『You’d be so nice to come home to』:1891年生まれコール・ポーター作曲のミュージカルの挿入歌。歌手ヘレン・メリルの歌唱が有名

*3)『Summertime』:1898年生まれ『ラプソディー・イン・ブルー』で有名な作曲家ジョージ・ガーシュインが書いたオペラ『ポーギーとベス』の挿入歌


② 60代女性Bさん、ジャズボーカルクラスでご家族も参加したケース

数年前、発表会で歌を披露する機会があり、ご家族が見にいらっしゃいました。そして発表会後、Bさんのご主人は、奥様をはじめ出演された方々が楽しそうに歌っている姿をみて「自分も習ってみたくなった」との事でレッスンを始められました。

ご主人がレッスンを始めたことで、ご夫婦の状況に変化をもたらしました。Bさんご夫婦の娘さんが社会人になり、子育てから解放され夫婦の会話も少なくなってきたというタイミングでした。この機会に同じ趣味を持ったことで、ご夫婦の会話が弾むようになったそうです。

発表会参加数回目から、ソロ曲だけでなく、ご夫婦でデュエットもされるようになりました。本当に微笑ましく拝見しております。そして、なんと今度はお嬢さんもレッスンを始めました。

ご両親の楽しそうな様子から、自分もチャレンジしてみたくなったそうです。私は近い将来、ご家族3人一緒に発表会で合唱することを提案しました。ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

現在(2022年11月)、ご家庭で「あの曲を歌ってみたら?」「こんな曲いいんじゃない」という会話で盛り上がっているそうです。音楽を通してこの様な家族団欒のお手伝いができること、私もとても嬉しく思っています。

Bさんは、お嬢さんが良きライバルとなったようでレッスンにも熱が入っています。とても熱心にとりくんでいらっしゃるので、歌いたい曲、チャレンジしたい曲がどんどんあふれていらっしゃいます。レッスン時「次はこれを歌いたいです」とおっしゃってくれるので、私も嬉しくなります。


③ 中学1年生C君、ポピュラーボーカルクラスのケース

C君は小学6年生からポピュラーボーカルのレッスンに来ています。持病があるとのことで、学校に行っても特別室で過ごすことが多いようです。中学に進学してから、しばらくは通っていたようですが、最近は休みがちな様子。しかしボーカルレッスンには休まず来てくれます。

毎回、時間ピッタリに、息をハーハーさせながら教室に入って来ます。「今日はこんなことがあったよ」と、C君の楽しそうな近況報告を聞き、基本的な発声練習にしっかり取り組み、Jポップを歌います。その歌声がとても素敵で、私が誉めるとポーズをとります。

最近はふたりで相談して、米津玄師、優理、あいみょんの曲を歌いました。音楽を通して自己肯定感を高めて欲しいと思っています。そして、このレッスンの時間が、C君の居心地の良い場所であって欲しいと心から願ってやみません。


(3)東北震災復興のためのチャリティーコンサート開催~音楽が与えてくれるもの~

2011年3月11日、東日本大震災。未曾有の大災害。被災当初は、命を守ること、衣食住を確保することが一番大切です。私が指導していた水戸の教室の天井が崩れ落ち、数ヶ月間休講となりました。

何もできない自分を歯がゆく感じておりましたが、復興が進むにつれ音楽が人々の心と体に与えるエネルギーの素晴らしさに気付きました。体が元気でも、心が元気でなければ動けないのです。そのような時に、音楽は人の心に寄り添い、背中を押してくれるものだったのです。

この思いを抱き、修理された水戸のレッスン会場で、チャリティーコンサートを行いました。音楽の力をあらためて痛感した出来事でした。震災後、レッスン希望者が増えました。

いつ何が起こるかわからない日々の中で、悔いなく生きるために、今やりたいことにチャレンジしたいという方が多くいました。音楽は、今日から未来への活力を与えてくれるのです。

(4)ジャズボーカル オーバー70シスターズのケース

ジャズボーカルクラスには、同じ年頃の女性が4名いらっしゃいます。発表会前に、その生徒さんから「4人でコーラスをやってみたい」と自発的に声があがり、メンバーのひとりが、コーラスのアレンジをされて「オーバー70シスターズ」と自らを名乗り、ステージに立ちました。

観客も大喜び。メンバーよりも年下の方たちから「かわいい~! 」と大絶賛されました。メンバーそれぞれに子育てを終え、ご両親の介護を乗り越えて、今を楽しんでいらっしゃる方たちです。

「今できることを楽しむこと」そして「わかり合える仲間がいること」を実感していらっしゃいます。自分も家族も健康で、好きなことができる「今」に、感謝をされていることでしょう。その思いが歌声となり、自分達にも、そして周りの方たちにも伝わるのだと思います。

皆それぞれのライフステージに合った音楽の楽しみ方をされています。音楽を楽しむことで、今日に感謝をする気持ちと、明日を楽しみに待つ希望がわいてくるのだと痛感いたします。

3.課題と抱負

より多くの方に私の思い描く「音楽」を楽しんでいただき、またこの活動を知って参加していただく方法を工夫したいと思います。どのような方でも、気軽に参加して体験していただける短期的なイベントやワークショップなども企画したいと思います。

今後は、より行政と連携協力して、地域の文化的活動、健康増進活動のお役に立ちたいと思います。「音楽」は、人の生活、心と体のあらゆるところに良い作用があることをお伝えし続けていきます。

(2022年11月28日公開)

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