活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例
【事例紹介】音楽を通じて、心の豊かさと日本文化の素晴らしさを伝えていきたい

JaXonプロジェクト 企画プロデュース・チーフディレクター
神奈川県 土井智与美さん

■活動テーマ:音楽を通じて、心の豊かさと日本文化の素晴らしさを伝えていきたい
北海道長沼町での民族楽器オーケストラのコンサート風景
北海道長沼町での民族楽器オーケストラのコンサート風景
■活動開始時期:2009年~現在
■場所:日本全国のライブハウス、コンサートホール、ホテル、学校など
■対象:一般市民、小学生

■活動内容

1.きっかけ

私自身は以前ピアニストとしてステージに立たせていただいた演奏者側の人間でした。日本全国、さまざまな土地で演奏する日々の中であることを感じました。

それは「日本には音楽を欲している人達がたくさんいる」「各地域に音楽と共に生きる素晴らしい文化がある」という二点です。その様な気付きを与えられた中で、私の心に小さな夢が芽生えました。「音楽を欲する人々と、日本文化を音楽で表現する演奏家を繋ぐ“架け橋”になりたい」という目標です。

そこで私は演奏家ではなく、音楽文化をサポートする裏方になることを決めたのです。この思いは今までのご縁のおかげで、2009年ピアニスト・作編曲家JaXon氏と私で「JaXonプロジェクト」(以下プロジェクト)という名称で、スタートしました。

当初は2人で始めたプロジェクトでしたが、現在は横浜を拠点に全国の音楽家と交流しながら音楽の素晴らしさを地域の人々に伝える活動を行っています。まだまだ小さなプロジェクトですが、その思いは形を成しながら大きくなっています。

2.具体的な内容

活動は大きく3つに分けて展開しています。

(1)「音楽を通して日本文化の素晴らしさを発信する活動」

私たちの音楽活動は出会いの中で生まれ進化してきました。樺太アイヌのトンコリ(*1)奏者との出会いは、私自身の音楽活動に対しての考え方を大きく変えてくれた、かけがえのないものでした。“知らない楽器の音との出会いから、知らない文化を知る”現在は筝奏者、津軽三味線奏者、尺八奏者をはじめ、外国の楽器タブラ(*2)奏者やディジュリドゥ(*3)奏者などと交流を深めています。

*1)トンコリ:樺太アイヌに伝わる伝統楽器。木製で5弦ある撥弦楽器。子供を抱きかかえるように持ち両手で弦をはじく。


*2)タブラ:北インド地方の代表的な太鼓の一種

*3)ディジュリドゥ:オーストラリアの先住民族アボリジニの金管楽器。本来の楽器の素材はユーカリの木で作られている。(日本で作られたディジュリドゥは日本産の材木で作られている)

どの楽器にも音を紡いできた先人たちの歴史と文化に密接に結びついています。また特徴的な音色とリズムそして名曲があります。それらを知った上で聴く演奏は本当に味わい深く、ほっこりと心に残ります。

私たちはこの感動を一人でも多くの人々に伝えるために音楽活動を行っていると言っても過言ではありません。

(2)「自分たちの音楽を発信するための活動」

2009年より活動してきたプロジェクトは、皆様のおかげで今年13年目を迎えました。その中で新たな音楽スタイルを発信するユニット「The Magic Touch of Afternoon BAND」が誕生しました。このバンドは
  1. プロジェクトの音楽への想いや取り組みを具現化する
  2. 地域のアーティストが活躍できるチャンスの場
  3. アーティスト同士の交流の場
という三つの考えから創られました。ユニットはメンバーを固定しないユニークなバンドとして現在、日本全国で音楽活動を行っています。

私たちはどの地域に行っても、そこに音楽家がいればセッションというスタイルを通して音楽の繋がりを持ちます。各地域のアーティストを交えることによって、より親しみやすい分かりやすい音楽発信を目指しています。

このバンドを通じ、四国松山のアーティストが横浜で、北海道のアーティストが四国で演奏したりするなど、音楽活動の幅が広がります。地域の人々にさまざまな演奏を聴いてもらえるプラットフォームのようなバンドへと成長を遂げています。音楽ジャンルと言えばアダルトオリエンタルジャズ(A.O.J.)です。編成はピアノを軸に、ボーカルと民族楽器です。ベースはディジュリドゥ、ドラムをタブラ、そして筝、トンコリなどの音色を加えて演奏することもあります。

(3)「地域貢献活動としての音楽活動」

現在、多くの地域で過疎化が進み小学校の統廃合が多く見られます。学校の文化活動はコロナの影響もあり、授業時間が大幅に減っているようです。文化活動は子供たちの想像力を生み、心を豊かにするとても大切な時間です。プロジェクトは生徒数の少ない学校を訪問し、授業として音楽の演奏やワークショップを行っています。

メンバーは自治体の予算により編成します。最小限ピアニストが一人で伺い、演奏・歌・指導・ナビゲートする場合と、学校側の要望により歌手やドラム、ギターなどの演奏者を同行することもあります。

演奏する曲は訪問した学校の校歌を必ず入れます。ほかに音楽に慣れ親しんでもらうことを目的に、オリジナルのピアノ曲・英語歌詞の曲・体を動かしたくなるようなリズミカルなものから選曲します。またその地域に根差した音楽・民謡を扱い少し変化を加えて興味を持ってもらう事で、生まれ育った地域の文化を伝えています。

子ども達は大人が考えている以上に感性が豊かで直ぐに音楽を捉え表現してくれます。ワークショップの45分はあっという間に終わります。終了後は多くの質問を受け、また後日お手紙をいただく事もあるほどです。

3.企画プロデューサー&チーフディレクターの役割

地域音楽活動では、主に依頼者の目的・内容・予算・希望の音楽をお聞きし、企画立案してそれに合った音楽と演奏者をマッチングすることが本来の仕事です。実際は楽器機材搬入・設営・搬出といった雑用も多いです。

しかし、この雑用こそがプロデューサーとしても大切な役割だと思って日々の仕事に取り組んでいます。下記の写真は絵本「うまれるまえのおはなし」から生まれた曲『いのちのふるさと』のリハーサルの様子です。


4.課題と抱負

(1)課題

予算作成と収支が一番の課題です。現在プロジェクトの音楽活動への応援金募集中です。また限られたスタッフで営業から経理・現場対応・広告宣伝SNS発信などの作業をこなしているので必要な期限内に効率良く、かつ正確に進めていくことも重要な課題です。

(2)抱負

お蔭様で全国の多くのアーティストたちの出会いからさまざまなアイデアが生まれます。プロジェクトでは色とりどりの企画アイデアを多くの地域へ発信できていると自負しております。

さらにホームページによる発信・SNS・YouTubeなどを充実させ多くの方に活動を知ってもらい、求めている地域に私たちの音楽を届けていけたらと考えています。

今後も過疎地域の小さな学校に通う子供たち、日本に住んでいる外国の子供たちなどに、私たちが創る共生の音楽を通して元気と楽しさを伝えていきたいと考えています。民族楽器を含めたいろいろな楽器と地域のアーティストと手を繋いで心豊かな音楽を発信していけたらと思います!


(2023年3月3日公開)


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