地域音楽コーディネータ― 特定非営利活動法人はまかる理事
滋賀県 安藤こず恵さん
■活動テーマ:若手が活躍!文化芸術で地域を楽しく美しく元気に! ■活動開始時期:2019年~現在
■場所:文化ホール、街のコミュニティスペース、商店街
■対象:小学生、中学生、高校生、若者
■活動内容
すぐに要因を探るため市内の学校にアンケートを実施しました。教員やPTAの方が知人の音楽家に依頼したコンサートや文化庁の派遣事業を実施している学校と、何も行っていない学校の差があることが浮き彫りになりました。
特に小規模校ほどその機会が少ないことがわかりました。小中学生をはじめとして、子供たちが文化芸術に親しむ機会を持つことを重要な課題だと感じました。
ちょうど長浜市文化芸術振興基本方針の改定準備をしていたので「次代の文化を担う子どもの育成」をその重点プロジェクトに据えました。ただ、文化事業予算が少ない中、どうすれば多くの学校公演ができるか悩んでいました。
当時、彼を含め若手の音楽家、劇団、アーティスト、文化ホールの職員の横のつながりが希薄でした。なぜならば市内で活動する若手アーティストは顔見知りであるものの、それぞれ独自に活動しており、交流する機会も少ない状況でした。
翌年、長浜市では地域おこし協力隊として声楽家とアート企画の2人の若者がきたので、彼らを地域の音楽家や音楽団体とコーディネートし地盤のない彼らの支えとなる若手の文化団体があれば良いと構想を練りました。
一つの流れとして
たまたま同時期に国が地方創生を打ち出し、地方自治体では創生事業の検討が始まっていたので、長浜市の地方創生事業「文化芸術に関わる若者たちの団体を作り、地域を元気にする文化イベントを行う」企画を提案しました。
この会議は、ながはまのカルチャーを元気にしたいという目的から、愛称が「はまかるNEXT」となりました。私が任意でメンバーを招集してきたため初対面同士が多く、チーム作りをしながら、年度末に行う若者による文化芸術祭「Nagahama-EX-Theater」に向けて活動を開始しました。
この芸術祭の成功を機に「はまかるNEXT」の活動が徐々に自走するようになりました。
現在、私は文化芸術振興の担当ではないのですが、発案者としての責任と今後を見守りたい気持ちがあります。
そして何よりすばらしいメンバーがそろい湖北の未来を変える可能性を持つこの活動が楽しく、これからも関わり続けたいと思い、文化芸術ユース会議のサポート会員となり、NPOはまかるの理事として活動に伴走しているところです。
https://hamacul.or.jp/activity/hamacul-next/
当団体の理事は、脚本家、演出家、舞台監督、俳優、ミュージカル俳優、文化ホールの照明技術者、文化担当をしていた自治体職員など幅広い人材で構成しています。当初は「長浜文化芸術ユース会議 はまかるNEXT」のメンバーを主軸に活動をしており、その事務局を市から移管されるのとほぼ同時期にNPO法人となりました。
ユース会議では地域の上質な文化芸術を担う若手の人材育成に取り組み、演劇専門コースの開設や、演劇や音楽、ダンスの小中学校派遣事業を長浜市から受託しています。またNPOとしては市と協働で市民創造オペラやべートーヴェン第九コンサートの上演を行うなど、上質な地域文化の育成と提供にも力を入れています。
https://hamacul.or.jp/
はまかるメンバーは演劇も音楽も好きで、歌も芝居もダンスもこなし、これまでに手がけた演劇公演も音楽劇やオペラなど、演劇と音楽の良さを生かせるものを制作してきました。
最近は、長浜文化芸術ユース会議のメンバーに演劇関係者の割合が増えてきたので、若手音楽家の発掘と関係づくりをしたいという思いや、音楽のコンサートと演劇公演の観客層と関係者は微妙に違うので、新たな客層にアプローチしたい面もあります。
*2)クレズマー:16世紀ごろ東欧やバルカン半島で誕生した音楽。『ドナドナ』や映画『シンドラーのリスト』が有名。
演目の一つ『ロミオとジュリエット』は長浜市とヴェローナ市(ロミオとジュリエットの舞台となったイタリアの都市)の姉妹都市30周年記念事業として開催していますが、ほか2つは音楽家を市内で探すところからスタートし、その音楽家の魅力を最大限に生かせるジャンルでプログラムが練りあがりました。
ともすればテーマを1つにしても朗読と音楽が遊離する可能性が有ります。そこは最初から演出家が入りプロデュースをすることにより、どちらの良さも最大限に生かせる有機的なコンサートに仕上がりました。
今回私が関わっているのは、音楽家を探し出し、演出家とつなげるコーディネーターとしての役割、ほかにジャンル選定のアドバイス、当日の運営です。
NPOはまかる公演は、通常300席~450席の文化ホールで行うことが多いです。しかしこのコンサートはシンプルで小規模で息遣いを感じられる空間を目的としているので、客席30席~40席ほどの地元のコミュニティスペースを会場としました。
実施にあたり会場の持ち主や担当者とは、商店街や民家隣接の能舞台で打合せとリハーサル含め、何度も会話を重ねました。文化ホール以外にも地元で音楽や演劇を応援してくださる場を見つけていくことも重要なことだと思っています。
またNPOはまかるが事務局を担う長浜文化芸術ユース会議では、長浜市の委託を受けて小中学校への音楽・演劇・ダンスの派遣事業を行っています。これはユース会議のメンバーを中心に地元の若手アーティストの発表の機会の確保と、子供たちが生の文化芸術を体験する機会の提供という一石二鳥を狙うものです。
この派遣事業に関わるアーティストたちを増やしていくことも重要で、演者の発掘と演目やプログラムの開発、音響や照明などスタッフ育成を同時に進めています。
全国的には県外から専門の演者を呼ぶ学校派遣公演は減少しているようですが、NPOはまかるの公演は地元の若手が地元で演じる文化芸術の地産地消ともいうべきものです。学校からのオファーはむしろ増加し、2022年度(令和4年)は18校へ赴き、何件かはお断りさせていただくこともあったほどです。
音楽や演劇といった舞台芸術は東京など大都市でないと生業にできないと思われています。大都市に行かずに地元で文化芸術を趣味ではなく生業にできるようにするために、アイデアと手法を常に考え、実行し続けるパワーを持つ若者たちが、はまかるとして活動しています。
彼らを支え続ける力を持つにはどうすればよいか、彼らが活躍できる地方都市をどのように創生していくかが私の課題です。
これらを少ないメンバーで回しているので、理事長やユース会議会長は忙しさに目が回っている状態ではありますが、滋賀県の文化芸術の台風の目にもなりつつあります。
「はまかる」の多くの公演はウェブ上でもご覧いただけるので、その活動を目にしていただき、是非市外の多くの方にも知ってもらえばと願っております。
(2023年3月20日公開)
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「皆さまの活動を掲載しませんか」
※ 音楽文化創造では、地域音楽コーディネーター資格取得の養成講座を実施しております。詳しくは下記をご覧ください。
「地域音楽コーディネーター」
#地域振興
#音楽祭、コンサート
滋賀県 安藤こず恵さん
■活動テーマ:若手が活躍!文化芸術で地域を楽しく美しく元気に! ■活動開始時期:2019年~現在
■場所:文化ホール、街のコミュニティスペース、商店街
■対象:小学生、中学生、高校生、若者
■活動内容
1.「特定非営利活動法人はまかる」設立に至るまで
(1)学校間の格差
長浜市職員である私は2014年(平成26年)文化芸術振興を担当することになりました。当時、事業目標のひとつが小中学校への地元音楽家や劇団のアウトリーチでしたが前年度実績は1件でがくぜんとしました。すぐに要因を探るため市内の学校にアンケートを実施しました。教員やPTAの方が知人の音楽家に依頼したコンサートや文化庁の派遣事業を実施している学校と、何も行っていない学校の差があることが浮き彫りになりました。
特に小規模校ほどその機会が少ないことがわかりました。小中学生をはじめとして、子供たちが文化芸術に親しむ機会を持つことを重要な課題だと感じました。
ちょうど長浜市文化芸術振興基本方針の改定準備をしていたので「次代の文化を担う子どもの育成」をその重点プロジェクトに据えました。ただ、文化事業予算が少ない中、どうすれば多くの学校公演ができるか悩んでいました。
(2)地方創生事業の提案
その頃、東京で俳優をしていた青年がUターンし、湖北地域(長浜市・米原市)で演劇をやりたいと訪ねてきました。演劇公演がほとんどない湖北地域で演劇の活性化を図るにはどうすればよいか話をするようになりました。当時、彼を含め若手の音楽家、劇団、アーティスト、文化ホールの職員の横のつながりが希薄でした。なぜならば市内で活動する若手アーティストは顔見知りであるものの、それぞれ独自に活動しており、交流する機会も少ない状況でした。
翌年、長浜市では地域おこし協力隊として声楽家とアート企画の2人の若者がきたので、彼らを地域の音楽家や音楽団体とコーディネートし地盤のない彼らの支えとなる若手の文化団体があれば良いと構想を練りました。
一つの流れとして
- Step1.学校公演を増やし地域の演劇を活発にする
- Step2.若手アーティストの交流ができる
- Step3.地域おこし協力隊の支えとなる団体を作る
たまたま同時期に国が地方創生を打ち出し、地方自治体では創生事業の検討が始まっていたので、長浜市の地方創生事業「文化芸術に関わる若者たちの団体を作り、地域を元気にする文化イベントを行う」企画を提案しました。
(3)長浜文化芸術ユース会議の誕生
こうして2016年(平成28年)に誕生したのが、長浜市内で活動する40歳以下のアーティストたちで構成された「長浜文化芸術ユース会議」です。会長は最初に長浜市で演劇をやりたいと訪ねてきた青年俳優、現在のNPOはまかる代表理事の磯崎が就任しました。この会議は、ながはまのカルチャーを元気にしたいという目的から、愛称が「はまかるNEXT」となりました。私が任意でメンバーを招集してきたため初対面同士が多く、チーム作りをしながら、年度末に行う若者による文化芸術祭「Nagahama-EX-Theater」に向けて活動を開始しました。
この芸術祭の成功を機に「はまかるNEXT」の活動が徐々に自走するようになりました。
現在、私は文化芸術振興の担当ではないのですが、発案者としての責任と今後を見守りたい気持ちがあります。
そして何よりすばらしいメンバーがそろい湖北の未来を変える可能性を持つこの活動が楽しく、これからも関わり続けたいと思い、文化芸術ユース会議のサポート会員となり、NPOはまかるの理事として活動に伴走しているところです。
https://hamacul.or.jp/activity/hamacul-next/
2.特定非営利活動法人はまかるとは
NPOはまかるは、「文化芸術のもつ力を、すべての人に」をモットーに、地域に暮らす人々が、等しく文化芸術に親しむことができる社会を目指して2019年1月に設立し活動を始めました。当団体の理事は、脚本家、演出家、舞台監督、俳優、ミュージカル俳優、文化ホールの照明技術者、文化担当をしていた自治体職員など幅広い人材で構成しています。当初は「長浜文化芸術ユース会議 はまかるNEXT」のメンバーを主軸に活動をしており、その事務局を市から移管されるのとほぼ同時期にNPO法人となりました。
ユース会議では地域の上質な文化芸術を担う若手の人材育成に取り組み、演劇専門コースの開設や、演劇や音楽、ダンスの小中学校派遣事業を長浜市から受託しています。またNPOとしては市と協働で市民創造オペラやべートーヴェン第九コンサートの上演を行うなど、上質な地域文化の育成と提供にも力を入れています。
https://hamacul.or.jp/
3.具体的な活動内容
「ワンプレートコンサート」
(1)目的
ウィズコロナで地域に文化芸術活動が戻ってきた2022年度、新規企画として音楽と演劇を1つの公演で楽しめるものを作りたいと考えました。発案者は劇団主宰者・俳優・演出家・脚本家・作曲家の大変マルチな才能を持つ女性です。はまかるメンバーは演劇も音楽も好きで、歌も芝居もダンスもこなし、これまでに手がけた演劇公演も音楽劇やオペラなど、演劇と音楽の良さを生かせるものを制作してきました。
最近は、長浜文化芸術ユース会議のメンバーに演劇関係者の割合が増えてきたので、若手音楽家の発掘と関係づくりをしたいという思いや、音楽のコンサートと演劇公演の観客層と関係者は微妙に違うので、新たな客層にアプローチしたい面もあります。
(2)内容
ワンプレートコンサートは、音楽と演劇のコラボレーションコンサートです。演出家が企画の中心となり下記の3種類で構成しました。- 『ロミオとジュリエット』(*1)の歌唱と戯曲の朗読
- ユダヤ系の音楽クレズマー(*2)と東欧民話
- お筝と民謡と江戸民話
*2)クレズマー:16世紀ごろ東欧やバルカン半島で誕生した音楽。『ドナドナ』や映画『シンドラーのリスト』が有名。
演目の一つ『ロミオとジュリエット』は長浜市とヴェローナ市(ロミオとジュリエットの舞台となったイタリアの都市)の姉妹都市30周年記念事業として開催していますが、ほか2つは音楽家を市内で探すところからスタートし、その音楽家の魅力を最大限に生かせるジャンルでプログラムが練りあがりました。
ともすればテーマを1つにしても朗読と音楽が遊離する可能性が有ります。そこは最初から演出家が入りプロデュースをすることにより、どちらの良さも最大限に生かせる有機的なコンサートに仕上がりました。
今回私が関わっているのは、音楽家を探し出し、演出家とつなげるコーディネーターとしての役割、ほかにジャンル選定のアドバイス、当日の運営です。
NPOはまかる公演は、通常300席~450席の文化ホールで行うことが多いです。しかしこのコンサートはシンプルで小規模で息遣いを感じられる空間を目的としているので、客席30席~40席ほどの地元のコミュニティスペースを会場としました。
実施にあたり会場の持ち主や担当者とは、商店街や民家隣接の能舞台で打合せとリハーサル含め、何度も会話を重ねました。文化ホール以外にも地元で音楽や演劇を応援してくださる場を見つけていくことも重要なことだと思っています。
またNPOはまかるが事務局を担う長浜文化芸術ユース会議では、長浜市の委託を受けて小中学校への音楽・演劇・ダンスの派遣事業を行っています。これはユース会議のメンバーを中心に地元の若手アーティストの発表の機会の確保と、子供たちが生の文化芸術を体験する機会の提供という一石二鳥を狙うものです。
この派遣事業に関わるアーティストたちを増やしていくことも重要で、演者の発掘と演目やプログラムの開発、音響や照明などスタッフ育成を同時に進めています。
(3)子供達の感想
「初めて生でお芝居を観た!すごかった!迫力あった!楽しかった!」という純粋な声が多いです。小中学校では、コロナ禍で生の公演を観る機会は激減しましたので、先生や保護者の方からも歓迎されています。全国的には県外から専門の演者を呼ぶ学校派遣公演は減少しているようですが、NPOはまかるの公演は地元の若手が地元で演じる文化芸術の地産地消ともいうべきものです。学校からのオファーはむしろ増加し、2022年度(令和4年)は18校へ赴き、何件かはお断りさせていただくこともあったほどです。
4.課題と抱負
(1)課題
湖北地域(長浜市、米原市)のように田舎の地方都市の子供、若者にとって、一番大きな格差は、選択肢や可能性の格差だと思います。「こんな生き方があるんだ」「長浜でもこんなことができるんだ」ということをもっと多様に見せていき、皆の選択肢を広げ可能性を伸ばしていきたいと考えています。音楽や演劇といった舞台芸術は東京など大都市でないと生業にできないと思われています。大都市に行かずに地元で文化芸術を趣味ではなく生業にできるようにするために、アイデアと手法を常に考え、実行し続けるパワーを持つ若者たちが、はまかるとして活動しています。
彼らを支え続ける力を持つにはどうすればよいか、彼らが活躍できる地方都市をどのように創生していくかが私の課題です。
(2)抱負
NPOはまかるでは、2023年度は本格アクションエンターテインメントを主軸とした舞台公演、ボイスドラマ制作、新作ミュージカルの制作、市民合唱団による第九公演、若手演劇コースのシェイクスピア公演、中高生による演劇キャンプ、中高生演劇コースの新規開設、子どもたちによるキッズアートフェスティバル、演劇と福祉ワークショップ、新作の学校派遣公演など、これから実施すること、企画の泉が尽きることはありません。これらを少ないメンバーで回しているので、理事長やユース会議会長は忙しさに目が回っている状態ではありますが、滋賀県の文化芸術の台風の目にもなりつつあります。
「はまかる」の多くの公演はウェブ上でもご覧いただけるので、その活動を目にしていただき、是非市外の多くの方にも知ってもらえばと願っております。
(2023年3月20日公開)
※ 皆さまの活動を掲載しませんか? ご希望の方は、下記のページをご覧ください。
「皆さまの活動を掲載しませんか」
※ 音楽文化創造では、地域音楽コーディネーター資格取得の養成講座を実施しております。詳しくは下記をご覧ください。
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