活動事例

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【事例紹介】高齢者(認知症を含む)に対する当診療所と介護事業所での音楽療法の実践

全国生涯学習音楽指導員協議会 大阪支部会員
大阪府阪南市看護師 池上智子さん

■活動タイトル:高齢者(認知症を含む)に対する当診療所と介護事業所での音楽療法の実践
介護事業所でのコンサートの様子
介護事業所でのコンサートの様子
■日時:毎月1回第3土曜日、年2回七夕・クリスマス時期
■場所:薮下脳神経外科内科リハビリ室、薮下脳神経外科内科介護事業所
■対象:高齢者(認知症を含む)

■活動内容

【1.活動を始めたきっかけ】

私は現在大阪府阪南市の薮下脳神経外科内科という有床診療所で看護師に従事しているかたわら、生涯学習音楽指導員の活動も続けています。

現在、日本は高齢化の進展に伴い2025年の高齢者数は約700万人(5人に1人は認知症)になると予想されています。今後さらに加速して行き、健康寿命(*1)の期待が望まれます。その中で特に認知症の人が、毎日病症と向き合い充実して生きていく事ができるような環境整備が必要です。そのためには
  1. 人との繋がりが途切れたり、閉じこもり・孤立・孤独となることがないようにしなければならない
  2. 住み慣れた地域で、でできる限り自分らしく長く生活を続けて行けるように国や地域で援助していくべき事が重要
とされています。

高齢者(認知症を含む)問題に対し、現在私がおかれている看護師と生涯学習音楽指導員という二つの立場で何かできる事はないかと考えました。そこで、この問題に対し、今まで研究している音楽療法の実践を有床診療所と併設介護事業所で行う事が、まさに地域住民が住み慣れた地域で、できる限り自分らしく生活を続けて行けることに繋がり、意義があると考えて始めたのがきっかけです。

*1.健康寿命 心身ともに自立し健康で生活できる期間・健康上の問題で日常生活が制限されることなく正確できる期間

【2.実践内容】

A. 診療所の併設の介護事業所でのコンサート

約10年前から毎年、年2回七夕とクリスマスに約45~60分のコンサートを開催しています。演奏者は私のエレクトーンの指導者、私と生徒で構成されている「マジカルフラワーズ」のグループが担当しています。演奏曲目は事前に介護事業所スタッフはじめ利用者の方にリクエストをとり、要望に答えるようにしています。またスタッフの方々は、七夕やクリスマスにはサンタクロースやトナカイに仮装してくださる等、協力体制が有り助かっています。

同時期に診療所病棟デイルームでミニコンサート、聴きに来れない患者さんには希望があればベッドサイドに出向き、演奏を行う等対応しています。また2019年12月18日~25日まで外来待合室でのミニコンサートも行いました。

B. 診療所リハビリ室でのお茶会コンサート

2017年9月から毎月1回第3土曜日に「くつろぎカフェ」と称して地域のボランティアさんとお茶会を開催し、最後にその月に合った歌を私の鍵盤ハーモニカやキーボードでの伴奏に合わせて全員で歌います。聴くだけでなく歌で参加することによってエネルギーの活性化に効果的です。

C. 診療所デイルームでの鑑賞

2020年の今年は新型コロナウイルス感染のため、診療所と介護事業所でのイベントすべてを中止せねばなりませんでした。しかし12月になると患者や利用者から「いつもの音楽を聴きたい」「今年はコンサートも何もないの?」との声を多く頂き、あわてて動画を撮って編集したものを、12月18日診療所病棟の昼食時デイルームにて、介護事業所ではレクリエーション時間にコンピューターから大型テレビにつなぎ、クリスマス演奏を動画に編集したものを見てもらいました。

【3.活動を通しての患者の反応と効果】

  1. 介護事業所での音楽コンサートで「ふるさと」をエレクトーンオーケストラバージョンで演奏したところ、利用者とスタッフが感動してくださり、涙を流し喜んでくれた。
  2. 介護しておられる患者家族にも介護事業所での七夕コンサートやクリスマスコンサートには「どなたでも参加可能」と案内をしている。そこで介護者などから「久しぶりにリラックスできた」「聴きに来てよかった」という声を聞かせていただく。
  3. 2018年、診療所のデイルームでクリスマスソングを鍵盤ハーモニカで演奏すると、病室から出てこられない患者から「部屋でも聴かせて欲しい」との希望があり、順番に各病室各患者に演奏して回った。すると皆それぞれが一緒に歌ったり、身体を動かしたりする様子を見ることができた。
  4. 2019年の夏、当診療所の入院4人部屋で、音楽を流してみたところ、何度かの脳梗塞後遺症で四肢マヒがあり、認知症も進み、普段ほとんど声も出さない患者が、「A」という歌手の名前を発した。そこですぐにそのA歌手の歌を聴いてもらったところ、わずかに動く指をリズムに合わせて動かしだした事例がある。
  5. 前患者が、全身状態も悪化し、眼もあけられず、命の残りもあと数日かというに、介護者(娘)がとても疲れていたことに気が付いた。声をかけ話の中で「お母さんと私は童謡の『ふるさと』『花』が好きだった」と聞いて、ベッドサイドで鍵盤ハーモニカを演奏させてもらった。うっすらと開眼してくれて聴いてくれているようであった。介護者(娘)も喜んでくれて、そのあとも色々と話をして「気分転換できた」といわれた。その翌日に患者は亡くなった。介護者(娘)も「昨日音楽を聴かせてもらってよかった。母もきっと喜んでいるだろう」と言ってもらえた事例。
  6. 2019年のクリスマス時期1週間、毎日11時15分から30分の間に2階病棟デイルームでクリスマスソングを鍵盤ハーモニカで演奏をした。「自分たちのころはクリスマスなんてなかった」「戦争だった」と聞き、翌日からは童謡や唱歌を演奏したところ一緒に歌ったり、手遊びなどをすることができた。

【4.今後の課題と抱負】

冒頭に書きましたように高齢者が増加し、それに伴って入院患者も介護者となる家族も高齢化し、介護者となる家族の負担が増加していく事を私自身が痛感しています。国や行政が医療制度や地域の高齢者支援施策に対して、まだまだ不十分で特に関わる人材に対しての報酬を考える事が鍵となっています。
又、音楽の力を活用して心身の向上を目指す音楽療法を実施している病院は全国で86病院(2017年)、大阪泉州地域では、病院、診療所で音楽療法に取り組んでいるところは実際に、まだないのが現状です。
私は看護師として、生涯学習音楽指導員として両方の使命を目標に、今までの経験を通して環境を整備し、音楽の持っている特性を活かして援助をしていきたいと考えます。それは私自身が働いている職場がすぐそこにあること、対象となる患者自身がすぐそこにいるからです。

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