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<新しい方角(邦楽:日本の伝統音楽)>
津軽三味線奏者東京都 ピエール小野さん

■活動タイトル:- The importance of music is to keep our spirits up
目次■活動開始年:2002年~現在
■場所:各種フェスティバル、イベント、コンサートほか欧米、アジア、中東各国での海外公演
■対象:一般
■活動内容
1.津軽三味線に出会ったきかっけ
幼少期にピアノを弾いていたものの、中高と音楽とは無縁の6年間を過ごしました。大学では何か音楽をやりたいと漠然と思っていた所、新入生歓迎活動をしていた津軽三味線(*1)サークルに出会い、興味を惹かれました。力強さと繊細が混在し、人の心を掻き立てるような津軽三味線の音は、それまで聴いていた音楽とは全く似ておらず、新鮮な衝撃を受けました。*1)津軽三味線:原型は瞽女(ごぜ)の三味線音楽で津軽地方(青森県西部)に伝わり完成された。『津軽じょんがら節』は代表曲の一つ。
2.具体的な活動
A.セ三味ストリート(せしゃみすとりーと)
「肉体派大道芸津軽三味線ユニット」として2002年から現在に至るまで活動している『セ三味ストリート』(せしゃみすとりーと)。活動の基本は、大道芸フェスティバルやさまざまなイベントなどです。大道芸の魅力は、客席との距離が近いこと。お客様の反応がダイレクトに伝わってきて、会場が一体となって盛り上がる感覚はほかでは得難いものです。
ステージではないようなハプニングも沢山あります。浅草で大道芸していた時に、お客さんが乱入(? )してきたかと思うと、こちらの演奏に合わせてエア三味線を始めたのは楽しい思い出です。
B.沙羅璃(しゃらり)
バイオリンと津軽三味線のコラボレーションユニットが『沙羅璃(しゃらり)』です。「クラシックをもっと身近に」というテーマで、オリジナル曲や日本の民謡(『八木節』など)も演奏しています。三味線は音の減衰が早いので、持続する音を出すことができるバイオリンとの組み合わせは、相性が良いのではないかと思っています。しかし、よりシビアなチューニングが要求されるので、演奏時は神経を使います。ちなみに三味線は構造上、チューニングが狂いやすい楽器です。
三味線奏者が曲の前後、ときには曲の最中でも糸巻き(ギターで言うペグ)で調弦しているのを見たことがあるかもしれませんが、少しでもズレると本当に気持ちが悪いのです。三味線の演奏を観る機会がありましたら、チューニングにも注目してみてください。

●沙羅璃(しゃらり)
https://www.sharari.info/profile
C.海外公演
ありがたいことにこれまで20数カ国で演奏させていただきました。地域で言うとヨーロッパ・北米・南米・中東・アジアなどです。一口に海外と言っても反応はさまざまです。例えば同じアジアでも、フィリピンでは派手なパフォーマンスが好まれましたが、インドネシアでは古典的な演奏の方が好評でした。
共通しているのは、どの国・地域に行っても日本の伝統楽器ということで敬意を持って迎えてくれるということです。これは先人が築き上げてきてくれた、日本というブランド力だと実感しています。
コロナ渦で海外公演も中止が続きましたが、先日サウジアラビアで開催された大規模なeスポーツイベントに、「けん玉×和楽器」の『和音和技』というユニットで出演させていただきました。日本のアニメのコスプレを楽しんでいる方も多く、遠い海の向こうの国の方々が日本文化に興味を持ってもらえていることは大変嬉しかったです。


3.課題
我々奏者はそもそも楽器が無いことには仕事ができませんが、実は三味線を作るのに必要な材料の確保が以前から問題になっています。例えば、三味線の胴に張ってある「皮」です。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、津軽三味線はもともと「犬皮」を使っています。主に東南アジアから輸入していましたが、世界的な動物愛護の潮流もあり、今後の輸入は厳しくなる見通しと聞いています。 三味線の音質に直結する部分なので、奏者として非常に気になっています。
代替品として、カンガルーの皮を張ってみる試みも行われています。ちなみにカンガルー皮の三味線は太い音がする印象です。また人工の皮、つまり「合皮」というものも存在します。
以前は練習用という位置づけでしたが、現在は音質が格段に良くなっており、人前での演奏に耐えるレベルになっています。「湿気などで音質が左右されない」「水濡れに強い」などの長所もあり、私も現在は合皮の三味線で演奏する事が多くなっています。
そのほか、三味線の「棹」や「撥」などについても、それぞれの問題があります。社会環境の変化に対応しつつ、いかに良い音を届けられるかが課題です。
4.抱負
津軽三味線には、逆境の中で力強く生き抜いてきた人々の生命力、精神の自由さが詰まっています。津軽三味線の始祖・仁太坊は「人真似でない自分の三味線を弾け」と教えました。今一度その原点に立ち還り、オリジナルのスタイルを確立すべく「破壊と創造」を繰り返し、津軽三味線の可能性を拡げていきたいと思います。●ホームページ
https://www.pierreono.com/
https://www.instagram.com/pierre_shamisen/
「新しい方角(邦楽)」は日本の伝統音楽の新しい道を探るコラムです。
新しく斬新な試みで邦楽(日本の伝統音楽)の世界に新しい息吹を吹き込んでいる邦楽演奏家の方やその活動などをご紹介し、邦楽の新しい方向性を皆さんと共に模索しています。
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